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2017年9月30日(土)

らんま自分の家。

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今日のお絵描き①。スティーヴ・ビコ

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今日のお絵描き②。キースミック。描いていて気づいたのだが、この二人はもはや、ぼくのなかでは、漫画の登場人物のように類型化が進んでいる。キースは、ジョニー・デップが、ジャック・スパロウの役作りでモデルにしたことを明らかにしたのをいいことに、自らカリブの海賊に寄せていっているように思える。

ルドルフ・フィッシャーの短編「逃れの市(まち)」("The City of Refugee," 1925)、以前、英語で読んだが、邦訳が出ていたとは気づかなかった。しかも、だいぶ前に買ってあった『黒人文学全集第八巻 黒人作家短編集』(橋本福夫、浜本武雄他訳、早川書房、1961)に収録されていた(井上謙治訳)。南部で白人を殺し、ニューヨークの黒人街に逃れてきたキング・ソロモン・ギリス。シェアクロッピング制度のなかで、ギリスは、その白人にさんざん騙され、痛めつけられてきた。彼は、ハーレムで初めて黒人の警官を見て驚き、自分も警官になりたいと思う。ふとしたきっかけで町のちんぴら、ウガム・マウスと知り合ったギリスは、麻薬密売の仕事を引き受ける。麻薬引き渡しの現場を警察に押えられたとき、ウガムは初対面のふりをしてギリスを裏切る。そのとき、憧れていた黒人女性に、白人の男がキスを迫っているのが目に入り、思わず立ち上がったギリスを、逃亡を図ったと判断した警官が取り押さえる。最後に、ギリスは目の前に立ちはだかった黒人の警官を見て、「黒人の警官だっているんだ・・・」と、つぶやく。ハーレム・ルネサンス華やかかりしころ、生き馬の目を抜くハーレムで、白人に対する鬱屈した反発と、それと裏返しの黒人に対する同族意識を持った南部出身の黒人男性が、同じ黒人に騙され、それでも「同じ黒人」という意識を捨てられない。

タイトルになっている「逃れの町(市)」は、旧約聖書の民数記35章、申命記19章、ヨシュア記20章に出てくる、パレスチナにあった古代ユダヤ人の罪人保護市。故意でなく、人を死なせてしまったものを、復讐から守るために作られた。酷い目にあわされていたとはいえ(だからこそ)、ギリスは意志を持って人を殺した(少なくとも「未必の故意」はあったはず)。ハーレムが「逃れの町」だとしたら、彼には、そこに逃れる資格はない。「もし人が隣人を憎んでそれをつけねらい、立ちかかってその人を撃ち殺し、そしてこれらの町の一つにのがれるならば、その町の長老たちは人をつかわして彼をそこから引いてこさせ、復讐する者にわたして殺させなければならない。彼をあわれんではならない」(申命記19:11-13)。だからこそ、ギリスは仲間だと思っていたウガムに裏切られ、この後、おそらくハーレムから(どころか、この世から)排除されることになるのだろう。とはいえ、本当に「逃れの町」を必要としているのは、誰なのか。踏みつけにされ続けたものが殺人を犯したとき、それは誤って人を殺した場合よりも、同情すべき余地があるし、復讐から守られるべきなのではないか。しかし、そのような「逃れの町」は、この世のどこにもない。同じ苦汁を嘗めてきた黒人の町ハーレムですら、そうなのだ。

後になって考えたこと。コメディとしての「逃れの市」。

2017年9月29日(金)

神奈川大非常勤、後期第二回目。初級英語2コマは、現在完了。現在完了は、果たして時制なのか。3つも4つも意味があるのはなぜなのか、疑問に答える形で、解説。基礎英語1コマは、五文型をやったあと、接続詞と節へ。that節など。

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今日のお絵描き。リチャード・ライト

リチャード・ライトの顔を描いて思ったのは、意外と童顔だな、ということ。怒れる抗議小説の作者には不釣り合いな、満面の笑みをたたえた表情の写真や、おしゃれにスカーフを巻いてたばこをくわえている写真もある。何よりもふくよかな頬が、太りすぎの子供みたいだ。

そこで、ふと思ったのは、当時の白いアメリカ人も同じことを考えたのではないかということ。そして、『アンクル・トムの子供たち』でデビューし、『アメリカの息子』でセンセーションを巻き起こして、自伝『ブラック・ボーイ』を発表したライトは、自分が少年であるというイメージを戦略的に利用していたのではないか。当時すでに30台で、そこそこおっさんだったにもかかわらず。ライトのような黒人の作家にとって、それは危うい行為だ。何しろ、黒人男性が、年少者を含むあらゆる白人から「ボーイ」「サン」と呼ばれることを、甘受しなければならなかった時代のことだ。

抗議小説のライトが、まさかそんな、ね・・・しかし、証拠がある。1951年に発表された『アメリカの息子』の映画では、43歳のライトが自ら、20歳そこそこのビガー・トーマスを演じている。違和感があることこの上ないが、当時の白いアメリカ人にとって、ライトは、ふとしたきっかけで凶悪犯罪を犯してしまう黒人少年ビガー・トーマスそのものだったのではないか。怒りに満ちた、恐るべき子供、というような。だとすると、ライトはそのパブリック・イメージを利用して、何を伝えようとしていたのだろう。

2017年9月28日(木)

「わたし、絶対できると思うんです~♪」自薦状のアリア。

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今日のお絵描き。コンゴ共和国初代首相パトリス・ルムンバ。もとにしたのは、1960年、ブリュッセルの円卓会議開催中のルムンバを写した写真。同じ写真のコピーのなかにはコートが緑のものがあるが、バックの風景も不自然な緑色なので、モノクロにあとから彩色したものではないかと思う。のちの苦悩に満ちた姿とは対照的に、意気軒高で、自信に満ちた表情。それに緑のコートはあっている気がしたので、お絵描きでもそのままにした。当時、まだ34歳。1年半後には、暗殺されている。

2017年9月27日(水)

「カイワレ大根、食べられただけで、夫婦の会話零だなんて」「他にも遺恨があるのでしょう」

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今日のお絵描き①。砂漠と車と女と女。

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今日のお絵描き②。「険しい道だよ。ついてこれるかい?」


ひらげエレキテル、久々の新曲「毎日がエブリデー」。いんちきボサノバというか、重複語法のナンセンスソングというか(タイトルは、チキリカのドラマーであるケイタローさんのアイデアをいただきました)、変わっていく同じものというか・・・自分ではけっこう気に入っています。

毎日がエブリデー
いつも変わっていくのさ
変わることだけが
変わらない

毎日がエブリデー
いつも転がっていくのさ
まるでローリング・ストーン

I Can't Get No ....

毎日がエブリデー
明日はどこにいるんだろう
ここじゃないどこかに

I Can't Get No ....
I Can't Get No ....
I Can't Get No ....
I Can't Get No ....
Satisfaction

2017年9月26日(火)

作務衣屋エルス(どこか他の作務衣屋で)

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今日のお絵描き。エルモア・ジェイムズ。元の写真は、1959年、シカゴのチャーリーズ・ラウンジでの演奏風景を撮ったもの。当時、エルモアは41歳。大戦中に心臓を悪くしており、40代初めとは思えない老い方であったという話もある。たしかに、写真のジェイムズは頬の肉も落ち、ふっくらとした若いころとは似ても似つかぬ顔だ。一方で、この年、ファイア・レコードに「ザ・スカイ・イズ・クライング」などの傑作を次々と録音している。しかし、病魔には勝てず、4年後の1963年、45歳の若さで心臓発作により亡くなった。

日本女子大非常勤、後期第二回目。「米文学論文随筆演習」は、ハリエット・アン・ジェイコブズの奴隷体験記を読む。第十七章「逃亡」・・・子供とともにプランテーションに送られることになったリンダ(ジェイコブズの仮名)が、子供を守るため、ついにフリント家を離れ、北部に逃亡したふりをして友人宅に身を隠す大事な場面だが、担当の学生が前期で授業をやめてしまったようなので、講師自ら訳して解説した。「アカデミック・ライティング」は、それぞれのペースで後期エッセイを仕上げていく。MLAの書式がまだ身についていない学生が多い。また、アウトラインの隙間を埋めるアイディアが思いつかない学生、思いつくのだが、どう整理したらいいかわからない学生も多い。一つ一つ解決していこう。

2017年9月25日(月)

こんがらかったがゆえに、ブルーなのか。ブルーであるがゆえに、こんがらがったのか。

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今日のお絵描き。苦悩するチェ・ゲバラ

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明治学院非常勤「アメリカ研究A」、後期第一回目。秋学期の授業の内容をダイジェストで。①ブッカー・T・ワシントンW・E・B・デュボイス、②黒人中産階級の登場とハーレム・ルネサンス、③大恐慌とニューディール政策、④公民権運動と公教育における人種隔離撤廃、⑤キング師マルコムX(もちろん、そこに二つの大戦がはさみこまれる)、といったぐあいに20世紀アフリカ系アメリカ人の歴史を追い、そこに、トラディショナルなジャズがビバップによって大きく変貌する一方で、R&B(リズム&ブルース)を生み、それがゴスペル的要素、カントリー的な要素を強めて、ソウルミュージックに発展、ヒップホップの登場以後、再びR&B(アール&ビー)と呼ばれるようになる過程を重ねた。特にキング師とマルコムXの比較では、キング師の「非暴力」は、「不服従」とセットで語られないければならないこと、マルコムXが主張したのは「暴力」ではなく、「自衛」であったこと、両者の思想は晩年、双方向的に接近しつつあったことを強調した。

國學院非常勤、後期第一回目。「1st Year English」「英語(L&W)」、ともにイントロダクション。授業の進め方などを説明するとともに、英語を理解するにおいて、語順がいかに大切かを強調した。次回は、どちらの授業もSVOCと五文型をじっくり教えて、3回目以降、前者は名詞節、副詞節、後者はバラク・オバマ大統領就任演説の開設に入る予定。

2017年9月24日(日)

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今日のお絵描き①。リトル・ウォルター以前、お絵描きに描いたような、凶暴な表情を見せることもあるウォルターだが、実はこんな好青年。映画『キャデラック・レコード』では、乱暴者だけど、寂しがり屋な、森の石松のような子分肌の男として描かれていた。マディ・バンドのウォルターは~しひらふのときはいいけれど~お酒呑んだら乱暴者よ~喧嘩早いが玉に瑕~馬鹿は死ななきゃあ、なおらない~っと、きたもんだ。

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今日のお絵描き②。リッチー・ヘヴンス

「カルメン」で知られるプロスペル・メリメが、奴隷の反乱を描いた短編「タマンゴ」(1829)を読んだ(『カルメン』、堀口大學訳、新潮文庫、1972)。ヨーロッパ人に奴隷を売り渡す沿岸地域の現地奴隷尚であったタマンゴが、奴隷船船長ルドゥの奸計にかかり、自らも奴隷として奴隷船の積み荷となる。だが、そこは計略に長けたタマンゴ、自らが売り渡した奴隷たちとともに反乱を起こし、白人たちを皆殺しにする。ところが、航海術を知らない奴隷たちだけでは帆船の舵を取ることはできず、奴隷たちは災難の元凶であるタマンゴを罵りながら、飢え死んでいく。妻アイチェも命を落とすなか、やせ衰えながらも、一人生き延びたタマンゴは、イギリスの巡洋艦に救われ、ジャマイカの中心地キングストンで解放されて、そこで死ぬまで暮らした。

解説によれば、メリメは奴隷貿易に反対する「キリスト教道徳協会」の創始者であるアルベール・スタフェールと親交があり、スタフェールのサロンでの世間話をもとに作品を書いたというのが定説になっている。とはいえ、小説の語り手が皮肉をもって描いているのは、奴隷貿易そのものの非人間性というよりも、「黒人も白人と同じ人間なのから」と嘯きながら、残酷な処置を講じる、奴隷貿易に関わる者たちの欺瞞である。物語の主題は、奴隷貿易をめぐる数奇な運命にあらがう男の強い意志であり、奴隷貿易それ自体を強く非難しているわけではない。ただ、19世紀のヨーロッパ人たちの、すべてを支配しているようで、肝心なところが何も見えていない自分たちの危うい立場に対する潜在的な不安を表しているとはいえるかもしれない。協力者であったはずのものが、自分たちが授けた武器をもって、反逆する可能性。協力者が奴隷になるなら、反逆者にもなりうる。その意味では、相手が見えないメルヴィルの「ベニト・セレーノ」のほうが、はるかに強烈だが。

「タマンゴ」についての評論、奥田宏子「メリメの自由論ーー『タマンゴ』、黒人、奴隷制」(『人文研究』173、2011、神奈川大学人文学会、p125―81)も併せて読んだ。作品のプロットを丁寧に跡付けたうえで、メリメがタマンゴのなかに描いたアフリカ像を差別的だとするクリストファー・L・ミラーの論を批判する。ミラーの論が、アフラ・ベーン「オルノーコ」における高貴な野蛮人としてのアフリカ人像と、同胞を犠牲にする奴隷商タマンゴを比較して、前者をアフリカ人に肯定的、後者を否定的とするものだとしたら、確かに乱暴である。両作品は書かれた時代も違うし、第一、「高貴な野蛮人」というステレオタイプが肯定的なアフリカ人像であるというのもどうかと思う。それどころか、ぼくはタマンゴが航海術も知らずに反乱を起こして、仲間を死なせた「ドジを踏みどおしのアンチヒーロー」(90)だとも思わない。タマンゴには自己中心的で、非人道的な面があり、その意味では、素直にヒーローとは呼べないのだが、奴隷にされるか、あるいは殺されるかといったギリギリの状況にあって、見切り発車で行動を起こすことは、必ずしも愚かな行為ではないし、むしろ自由を獲得するために何かをするということは、結果いかんにかかわらず、必要な行為である。そのまま奴隷となる運命を引き受けるか、可能性のない反抗に身を投じて、生きた証を残すか ― 選択を迫られ、後者を選んだタマンゴは、その点に限って言えば、ストレートな意味でのヒーローである。

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今日のお絵描き③。若いころの八千草薫さんに挑戦しました。かなり頑張りましたが、惨敗です。この美しさが、ぼくに再現できるはずがありませんでした。同じ人類とは思えん。

2017年9月23日(土)

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今日のお絵描き。サッチモエラ

プレーンズ、レコ発記念ライブ@下北沢Lagunaに、ひらげエレキテルとして出演して、6曲歌ってきました。演目は、「New Song」「左目のブルース」「かわいい子猫ちゃん」「まあるいお月さま」「正義の味方はいつも顔を隠している」「最後の日」。暖かいお客さんに支えられて、楽しく歌うことができましたが、歌詞を忘れるなどの失態もあり、反省しきり。出直してきます。共演者は、主役のプレーンズ以外は一度共演したことのあるみなさん。ヴォイス・パーカッション+アコギという意表を突く組み合わせのオオハライチは、キーボード/トロンボーンが加わり、以前共演した時とはまた違った姿を見せてくれました。ギター弾き語りのや~まんくんは、アシッド・フォークを思わせる歌とギターで、独自の世界に突き進んでいる。ギターに粗さが残っているところが、かえっていい。しびれました。ピアノ/歌とベースの女性二人組ポピーコットは、あと2回でライブ休止とか。歌もピアノもベースも、達者なだけでなく、並ではないグルーヴと歌心がある二人なので残念。ソロ活動は続けるそうだし、「解散」ではなく、「休止」としたところに希望を見たい。そして、プレーンズはピアノ/歌の女性と、ベース、ギターの男性が固める3人編成で登場。ひねりを聞かせたポップスというこの世で一番素晴らしい音楽。冒険をテーマとした衣装や、メンバー間のやりとりもステキ。ライブ終了後も、音楽やそのたもろもろの話をして、楽しくすごさせていただきました。お疲れさまでした!

2017年9月22日(金)

気がつくと、八千草薫さんの若いころの写真を集めていた。

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今日のお絵描き。メンフィス・ミニージョー・マッコイ。この二人のおしゃれマスターぶりときたら。

神奈川大非常勤、後期第一回目。初級英語2コマは、that節と時制の一致。時制の一致は間接話法における視点の移動という日本語と英語の違いで間違えないようにするための公式である。英語は視点が移動せず、過去に起きたことは過去形、現在に起きたことが現在形を使えばいいのだが、日本語は英語でいう主節の主語に視点が移動してしまうので、主節の動詞が過去の場合、従属節の動詞は主節の主語から見た現在になり、過去に起きたことだから過去形を使っている英語とずれる。こうした理屈を、もう少し優しいことばで説明して、「よくわからない人は、<主節の動詞を過去にしたら、従属節の動詞もひとつ時制を前にする>と覚えてね」と公式化した。基礎英語1コマは、SVOCと五文型。日本語と英語が根本的に違うところ。日本語は、助詞という短い言葉をつけることによって、それぞれの言葉がどんな役割を果たしているかを示している。ところが、英語の主幹部分には、日本語の助詞にあたるような言葉がない。英語は助詞ではなく、順番によってそれぞれの言葉を位置づけている。その語順の法則をまとめたものが、SVOCであり、五文型である。

2017年9月21日(木)

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今日のお絵描き①。マイーザ(ブラジルの歌手)。

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今日のお絵描き②。ローリン・ヒル

サン・ハウス伝記、続き。ブルースの一貫性。後年、ハウスは他のブルースマン(特に白人の)が、常套句を並べて、「ブルースでござい」としていることに批判的だった。ブルースはもっと一貫性のあるものでなくてはならない。しかし、「マイ・ブラック・ママ」にしても、「説教ブルース」にしても、オリジナルのフレーズと"floating verse"(アフリカ系アメリカ人の共有財産としての常套句)を組みわせたハウスのブルースは、一見すると「一貫性」からはほど遠く、それ自体がハウスの主張を裏切っているように見える。しかし、そうではない。伝記の作者ダニエル・ボーモントによれば、ブルースの一貫性を考えるとき、ブルースが物語を語るものではないということに注意しなければならないという。ある出来事が、いつ、どこで、どのようにして起こったのか、三人称で事細かに語るバラッドと違い、ブルースではそうした詳細はさして重要な意味を持たない。ほとんどの場合、一人称で語られるブルースで重要なのは、語り手である「私」が、ある出来事をどう受け止めたか、という「感情」である。結果として、ブルースの一貫性は「語りの」(あるいは、プロットの)一貫性ではなく、「意味論的な」一貫性、表現された感情の一貫性でなくてはならない。ハウスの場合、ばらばらになりそうな要素をつなぎとめて、彼のブルースに一貫性を与えているのは、「怒り」、あるいは、人生に対するフラストレーションであるというのが、ボーモントの見立てだ。

2017年9月20日(水)

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今日のお絵描き①。煙草をふかすハウリン・ウルフ

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今日のお絵描き②。サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡ

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今日のお絵描き③。エリザベス・コットン

サン・ハウス伝記。今日、読んだところでは、パラマウントに残した初録音を対象に、ハウスの音楽をわりと突っ込んで検証している。音楽についていえば、まずは「強烈で、推進力のある(driving and propulsive)」そのリズムだ。親指でベース音をはじき、1弦、2弦にスライドバーをすべらせながら、リズムを刻む奏法そのものは、デルタ・ブルースでは珍しいものではないかもしれない。しかし、ハウスの場合、その引っかかり方、つんのめり方が、他のブルース・マンと比べても尋常ではないのだ。ベースのリズムと高音のメロディー、あるいはカウンター・リズムが、ぎくしゃくしながらギリギリのところで一体性を保っている。最初に晩年の演奏を聞いたときには、年取って腕がうまく回らないのかと思ったほどだ。しかし、初録音からして、同じつんのめり方をしているのだから、これはもう、ハウスの望むサウンドだとしか言いようがない。全然違うが、リズムの異様さという点では、セロニアス・モンクに匹敵する。伝記の作者ダニエル・ボーモントはそこに、「彼の人生を特徴づけているパターン、極端から極端への目まぐるしい移り変わり」を見る。ハウスの歌い方も、既成のリズムを崩す、特異な暴力性を持っている。"My Black Mama, Part 1"では、本来2音節目にアクセントを置くべき "satisfaction"(サティスファクション)を、3音節目にアクセントを置いて(サティスファクション)歌っている。英語のような、強迫弱拍のリズムが意味を理解するうえで重要な意味を持つ言語では、普通考えられないことで、ボーモントは「ひとつの単語をパキッと二つに割ってしまうような」こうした歌い方に、ハウスの「苦しみや怒り(bitterness and anger)」を見る。

2017年9月19日(火)

雲竜と、ラ・マン。

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今日のお絵描き①。メイヴィス・ステイプルズ

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今日のお絵描き②。パブロ・ピカソ

日本女子大非常勤、後期第一回目。「米文学論文随筆演習」は、前期に引き続きハリエット・アン・ジェイコブズの奴隷体験記を読む予定だが、履修者もまだ決まらない段階なので、今週はテキストには入らず、アレックス・ヘイリー原作のテレビドラマ『ルーツ』から、クンタ・キンテが競売でレイノルズ農園に買い取られるところから、逃亡を試みて失敗、鞭打たれるシーンまでを見た。学生たちは何を思ったか。「アカデミック・ライティング」では、ほとんどの学生が夏休み中にやってくるはずの宿題を忘れている。しつこく言わなかったぼくの責任でもあるが、気合を入れ直させないと。授業としては、後期エッセイのアウトラインの発表をしたあと、引用文献リストの作り方について簡単な解説をした。

サン・ハウス伝記、ハウスよりもチャーリー・パットンがむちゃくちゃで面白い。ハウスとパットン、ウィリー・ブラウンルイーズ・ジョンソンの4人(と運転手役の男)で、パラマウント・レコードのあるグラフトンに向かう途中、メンフィスから飲み通しだったパットンとブラウンが喧嘩をはじめ、怒ったパットンは時速60マイルで走る車から飛び降りようとして、危うくハウスに止められる。車を止めて殴り合いで勝負、となったが、飲みすぎて足元のおぼつかない二人。パットンは買ったばかりのステラ・ギターの上に尻もちをついて、ぺしゃんこにしてしまう。パットンは、次に若い恋人ルイーズ・ジョンソンに怒りをぶつけ、平手打ちに。うんざりした彼女が、ハウスの座っている後部座席へきたのをいいことに、ハウスはジョンソンを口説き始め、酔っぱらって正体をなくしたパットンをしり目に、グラフトンにつく頃にはすっかりジョンソンを口説き落としていた、という話。さすが、我らがブルース説教師。ハウスもなかなかやりおるわい。そのとき録音されたものを集めたのが、『サン・ハウス&チャーリー・パットン 伝説のデルタ・ブルース・セッション1930』。そう思って聞くと、感慨もひとしお。サン・ハウスは当時28歳、パットンが38~9歳、ウィリー・ブラウン30手前の29歳、ルイーズ・ジョンソンが、ハウスの記憶によれば、23、4歳。ちなみに、ハウスはその晩、ジョンソンと同じ部屋に泊まった。翌朝、パットンに呼び出され、ぶん殴られるかと思って、びびりまくったところ、「まあ、大事にしてやってくれ」とあっさり譲られて、拍子抜けしたとか。よほど、ハウスのことを買っていたのか、単に気が変わっただけなのか。パットンの人柄を示すエピソードではある。

2017年9月18日(月)

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今日のお絵描き①。レッドベリー。どうしても、ダウンタウン松本人志に近づいてしまう。

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今日のお絵描き②。カーター・ファミリー。こちらは一人、杉田かおるになってしまった。

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今日のお絵描き③。ドリフ荒井注、在籍時)

サン・ボンズのブルース「飲みこみにくい薬」("A Hard Pill To Swallow")。1コーラス終わるごとに、「愛のラーメン」を連発する。ほんとうは"I ain't no lying man" (俺はうそをつくような男じゃない)と歌っているのだ。本当の歌詞はこんな感じ。でも、ラーメンは愛。

飲みこみにくい薬

飲みこみにくい薬 
苦しみで胸がいっぱいだ
飲みこみにくい薬 
苦しみで胸がいっぱいだ
なあ、みんな聞いてるか 
オレはウソは言わない男だぜ

今朝、目が覚まし
お日様を見上げて
あの子がしたことを
考えたんだ
飲みこみにくい薬だったよ 
苦しみで胸がいっぱいだ
なあ、みんな聞いてるか 
オレはウソは言わない男だぜ

角を曲がって
新聞スタンドに行って来たら
あの子が男と
よろしくやってたのさ
飲みこみにくい薬だったよ 
苦しみで胸がいっぱいだ
みんな聞いてるか 
オレはウソは言わない男だぜ

ポリ公が近づいてきても
逃げはしなかった 
オレはオレで気ままにやるさ 
あの子もどこかでよろしくやってる
飲みこみにくい薬だったよ
苦しみで胸がいっぱいだ
なあ、みんな聞いてるか 
オレはウソは言わない男だぜ

ムショにいたときにゃ
気ままにやってたが
家に帰ったら 
赤ん坊が泣くのが聞こえた
飲みこみにくい薬だったよ 
苦しみで胸がいっぱいだ
なあ、みんな聞いてるか 
オレはウソは言わない男だぜ

2017年9月17日(日)

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今日のお絵描き。アルフレッド・ヒッチコック

2017年9月16日(土)

一見すると、問題なさそうに見えるもの。モンダミンをかけたかき氷。

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今日のお絵描き①。アタウアルパ・ユパンキ

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今日のお絵描き②。オーティス・レディング

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関内のレストラン&ライブハウス=シルバーバックで、10月に南半球系バンド・チキリカで共演することになっているR&Bバンド=The Speed Ballsのライブを見てきました。ヴォーカルの保坂さんとは、同じ曜日に神奈川大の授業を担当している関係で、知り合った。神奈川大で非常勤を始めたら、同じ曜日にディープ・ソウルにやたら詳しい人がいる・・・それが保坂さんだった。ディープ・ソウル、サザン・ソウルといえば、ひらげの大好物。横浜でライブをやるというので、いそいそと出かけていきました。マニアックでありながら、マニアを気取るためだけに選んだのではないセットリスト。ツボを押さえた演奏。ダン・ペン三連発には痺れました。オリジナルを丁寧に再現しながら、ロッキンな勢いも失っていない。かっこよかったです。10月はよろしくお願いします。

10月のライブの詳細

10/21(土)大久保・ひかりのうま
The Speed Balls/チキリカ/海老澤諭Acoustic,Sing&Air
open 18:30 start 19:00
1800円+D

タイムテーブル
18:30 open
19:00-19:40 The Speed Balls
19:55-20:35 チキリカ
20:50-21:30 海老澤諭Acoustic,Sing&Air

コンパクトな会場で、まさかの6人組大所帯バンド3連発。どうなりますことやら。

2017年9月15日(金)

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今日のお絵描き①。ボブ・マーリー

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今日のお絵描き②。セロニアス・モンク

サン・ハウス伝記続き。1929年ごろ(例によって、期日ははっきりしないことが多い)、安酒場でのいざこざから友人の喧嘩相手を撃ち殺したハウスは、故殺罪で有罪となり、ミシシッピ州立刑務所に収監される。ミシシッピ州立刑務所、別名「パーチマン農場」は、過酷な強制労働で知られる悪名高き農場刑務所で、奴隷時代さながらの非人間的な囚人の扱いは、ブッカ・ホワイトのブルースにも歌われるほどだった。

パーチマン農場ブルース

今朝、判事はオレに終身刑をくらわせた
パーチマン農場で(×2)
悪かねえ気もしたが
泣いてる女房を残していくのがね

4年が経って あばよ、女房
お前は行っちまった(×2)
でも、いつか
お前はオレの孤独な歌を聞くだろう

ああ、聞けよ、男たち
悪いこた言わないから(×2)
いい暮らしがしたいなら
パーチマン農場だけはやめときな

朝っぱらから仕事に行く
夜が明けてすぐさ(×2)
日が沈むまで
仕事は終わらない

ああ、パーチマン農場にはうんざりだ
家に帰りたくてしょうがない(×2)
でも、いつの日かきっと、オレはやってやるぜ

サン・ハウスもまた、刑務所での経験をブルースにしている。「ミシシッピ郡立農場ブルース」。タイトルは「郡立農場」になっていて、のちに交通違反で服役したチュニカ郡立刑務所のことを指していると思われるが、4コーラス目に出てくるリロイ・リーはハウスがパーチマンに服役する原因となった殺人の被害者である。また、歌われている過酷な強制労働は、パーチマンにも当てはまるものであるとハウス本人が証言している。

ミシシッピ郡立農場ブルース

母ちゃんの腕に抱かれた 赤ん坊だったらいいのに(×3)
そうすりゃ、郡立農場で働かなくてすむ

すっからかんで追い出されたほうがましさ(×3)
前科者になって 働くぐらいなら

半年くらったやつもいりゃあ、一年ってやつもいる(×3)
哀れなオレはここで終身刑

奴らはオレを刑務所に入れた ほっといちゃくれないんだ(×3)
リロイ・リーのやつを殺したっていうのさ

おお、主よ、主よ(×3)
好きな女はオレを犬扱い

でかい鐘が鳴るのを聞きたくない(×3)
「哀れなやつめ、哀れなやつ、まだまだこんなことが続くぞ」

さらに、この歌の1942年バージョンというべき「郡立農場ブルース」では、奴隷監督さながらの、「キャプテン」と呼ばれる人物が登場する。キャプテン・ジャックはチュニカに実際いた人物らしい。「背中に名前を書きつける」というのは、鞭打つことを意味していると、ハウス自身が述べている。奴隷解放から半世紀以上経ったこの時期でも、懲罰の名目で、奴隷制時代と変わらない強制労働と虐待が行われていたのである。

郡立農場ブルース

南部じゃ、悪いことをしたら(×3)
郡立農場に入れられる

キャプテン・ジャックってやつの下に置かれるんだ(×3)
そいつはあんたの背中のあちこちに 自分の名前を書きつける

でかいスコップで 溝を掘らされて(×3)
生まれてこなかったらよかったのにって 神に祈ることになる

日曜日には囚人たちは悲しそう(×3)
残された時間がどのくらいか考えて

ハウスの服役は、家族による嘆願などもあって、短いものに終わった。事件を起こしたクラークスデイルを離れるという条件で、釈放されたハウスは、クラークスデイルから北へ16マイルほど行ったところにある、ルーラという田舎町に移り住んだ。そこで、チャーリー・パットンと運命的な出会いを果たすことになる。

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今日のお絵描き③。ジェリー・リー・ルイス

2017年9月14日(木)

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今日のお絵描き①。シスターズ。

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今日のお絵描き②。ロバート・ジョンソン

2017年9月13日(水)

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今日のお絵描き①。ビッグ・ママ・ソーントン

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今日のお絵描き②。ウッドストックサンタナ

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今日のお絵描き③。プロフェッサー・ロングヘア。長髪教授の着ているTシャツが変で、気になる。おじいちゃんのイメージだったんだけど、70年代に再評価された時ですら、50台だったんっだな。何しろ、61までしか生きていない。

サン・ハウス伝記の続き。ハウスが、友人から買った壊れたギターを持って、ウィリー・ウィルソンという男にギターを教えてもらいに行ったとき、ウィルソンは「あのな、ブルースはそんなふうに勉強するもんじゃねえんだ。弦が一本足りねえな。まず、6本弦を張れ。後ろもぶっつぶれてるじゃねえか。オレがこれから何をするか教えてやる。そいつを直せるか見てやるよ」と言って、テープかなんかを出して、とりあえず演奏できるところまでギターを直したという。「再発見」後の昔話は、インタビュー毎に人物の名前が違っていたり、事実関係についてははなはだ心許ないのだが、このエピソード、じんわりと好きだ。

それにしても、説教師として教会にずっぽり浸かり、ブルースを「悪魔の音楽」として忌み嫌っていた男が、一夜にしてブルースの使徒となってしまうというのは、どうした心境の変化だろう。ハスラーからブラック・ムスリムの敬虔な信徒になったマルコムXと、方向は逆だが共通するものを感じる。サン・ハウスの転向は、アフリカ系アメリカ人の文化の本質が、アミリ・バラカのいう「変わっていく同じもの」、あるいは「<変わっていく>という同じもの」にあるというぼくの持論(『越境・周縁・ディアスポラ―三つのアメリカ文学』所収の「変わっていく同じもの/<変わっていく>という同じもの」参照)を補強するものになるかもしれない。

ハウスの「説教ブルース」('Preachin' Blues')の1965年ヴァージョンには、酒と女に溺れて教会を追われ、ブルースに救いを見出すまでの体験が反映されている。

説教ブルース(ブルースを説教する)

神の啓示を受け、バプテスト教会の一員になるんだ(×2)
バプテスト教会の説教師になりたいんだ
そうすりゃ、働かなくてすむ

ある教会員が跳びあがって、薄ら笑いを浮かべ(×2)
こう言った。「年を取ったら、また安酒場の生活に戻ります」

あるシスターが跳びあがって、叫び出した(×2)
「ウイスキーがなくなるってんだから、うれしいじゃないか」
  ※禁酒法(1920-33)のことを歌っていると思われる

別の教会員がこう言った。「黙っていたら、どうだ」(×2)
ウイスキーを飲んだろう。お前の嘘はひどく臭うぞ」

あるシスターが跳びあがって、叫び出した(×2)
「一部始終、どういうことか、教えてやるよ」

別のシスターがこう言った。「黙っていたら、どう?」(×2)
「あの人はクビになったのよ。くだらないおしゃべりはやめなさいよ」

オレは説教台で、跳びあがったり、跳び下りたり(×2)
隅でシスターたちが、大声で「アラバマ・バウンド」を歌っている

スーツケースをつかんで、旅に出るんだ(×2)
「さらば、教会。神があんたらの魂をお守りくださいますように」

オレだけの天国を見つけられたらいいと思うんだ(×2)
オレの女たちにはみな、幸せな家庭を持ってもらいたい

オレはブルースってやつを説教していくよ
自分の席を見つけて座ることにしたんだ(×2)
でも、精霊が下りてきたら、あんたにもそうして欲しい

2017年9月12日(火)

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今日のお絵描き①。マディ・ウォーターズ

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今日のお絵描き②。どこからどう見ても、チンピラやくざのライトニン・ホプキンスを、昭和のガード下に置いてみる。

ボイトレ・メモ。喉を下げた歌い方をしても、響かせる場所を鼻にもっていけば、オペラチックな歌声にはならない。

サン・ハウス伝記の続き。無事、神の啓示を得て、説教師になったハウス。これで、シェアクロッパーの報われない仕事から解放される、と喜んだのもつかの間、多くの人々に道を説かなければならないというプレッシャーから、酒と女に溺れるようになり、そのことが原因で、教会を追われることになる。だめじゃん、サン・ハウス!いいぞ、サン・ハウス!教会を離れたハウスは、農作業に戻ることなく、たまたま通りがかったハウス・パーティで聞いたスライド・ギターの音に魅せられ、ブルースの世界に身を投じる。1927年のある土曜の夜のことだった。

Fire
火事のような夕焼けだった。

2017年9月11日(月)

お絵描きが止まらない。

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今日のお絵描き①。カワイコちゃんを描く喜びパート4。

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今日のお絵描き②。ジョン・ベルーシ

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今日のお絵描き③。センベーヌ・ウスマン

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今日のお絵描き④。アルバート・コリンズ

16年前、双子のビルが崩れ落ちたとき、世界のどこかに、憎悪が存在するという事実に多くの人が気づかされた。テロ行為は、結局、苛烈な報復しか生み出さなかったし、踏みつけにされてきた人たちですら、あのような惨事を望んでいたわけではない。しかし、憎悪の存在を知らしめることが、テロリストたちの目的だったとすると、彼らは作戦に成功したことになる。そして、その「成功」が、あちこちで踏みつけにされてきた人々の感情と通じ合うものがあることを明らかにしてしまった。オレはここにるぞ。踏みつけられたものの憎悪が、俺の存在を証明しているぞ、と。テロ行為がますます苛烈さを増していくのには理由がある。暴力が苛烈であればあるほど、自らの存在を証明する憎悪の強さが誇示されるからだ。経済的な援助によって、生きる手段を提供するだけでは、おそらく憎悪はなくならない。問題は「生きる手段」ではなく、「生きる目的」が見いだせないことにあるからだ。憎悪のなかにしか、生きる価値を見出せない人たちが、平和に自らの存在を証明するにはどうしたらいいのだろう。

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今日のお絵描き⑤。ウディ・ガスリー

サン・ハウスの伝記(Daniel Beaumont, Preachin' the Blues: The Life and Times of Son House )を読んでいる。いろいろと面白い。

まずは、サン・ハウスの劇的な「再発見」から。消えゆくブルースをメインストリームの音楽ビジネスのなかに掬いあげる「再発見」が、ブルースを周縁化する白人中心的な試みであったとしても、3人の若者がサン・ハウスというひとりの黒人を探してミシシッピをうろうろしていた1964年、同じミシシッピで同じ年輩の公民権運動家が3人殺されていることを考えれば、「再発見」のためのフィールドワークが、危険を伴うものであったことがわかる。もっとも、探索者たちは勇気をもってというよりも、熱に浮かされるようにして、旅に出たのだろうが。

若いころのハウスが、教会にどっぷりつかっていて、「悪魔の歌」であるブルースを嫌っていたというのも、聞いてはいたけれど、予想以上である。まだ経験していない信者が、宗教的な目覚めを待つ気持ちが、セックスがどんなものか想像する童貞の気持ちにたとえられていて、ちょっと笑った。ラングストン・ヒューズの自伝『ぼくは多くの川を知っている』(木島始訳、河出書房新社、1972、The Big Sea、1940)のなかに、少年時代のヒューズが、周りの大人の期待を一身に受けながら、どうしても「目覚める」ことができず、悩むシーンがあった(ヒューズとハウスは、二人とも1902年生まれ)。

音楽的には、教会の音楽に当然、深い影響を受けはずだが、一方で、父親やオジがブラスバンドをやっていたというから、プリ・ジャズ的な音楽にも接していたことになる。もっとも、ハウスはブラスバンドはあまり好きではなく、ギターに興味があったようだが。ちなみに、靴磨きをしていたときに、ルイ・アームストロングの靴を磨いたというエピソードが紹介されていて、この時代の、ブルースとジャズの距離感というのはどのようなものだったのか、気になるところ(サッチモはハウスの1歳年上)。

今日は、最初の結婚の話まで。ハウスは19歳の時に、32歳のキャリー・マーティンという女性と結婚している。ゾラ・ニール・ハーストン『彼らの目は神を見ていた』のティー・ケイクを地で行っていたんだな。最近、若いころの写真が公表されたけれど、イケメンだもんなぁ。この年の離れた結婚に家族は反対し、結婚式にも出席しなかった。ハウスの従弟フランクと、ハウス夫妻は、キャリーの地元で暮らしはじめるが、妻の目的が自分を父親の農園で働かせることなのではないかと、ハウスが疑い出したために、結婚は破綻してしまう。

さあ、これから、ハウスがどのようにして、ブルースにのめり込んでいくのか。楽しみ。

2017年9月10日(日)

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今日のお絵描き。ントザケ・シャンゲ。アフリカ系アメリカ人の女性劇作家・詩人。代表作『死ぬことを考えた黒い女たちのために』(For Colored Girls Who Have Considered Suicide / When the Rainbow Is Enuf、藤本和子訳、朝日新聞社、1982、1976)。

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今日のお絵描き②。なぜかバイクに乗ってギターを弾くアリ・ファルカ・トゥーレ

2017年9月9日(土)

考えてみると、「男子化粧室」というのは、面妖な名前だ。

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今日の絵描き①。ニーナ・シモン。ニーナ・シモンの顔は、アフリカの彫像のようだ。

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今日のお絵描き②。教会のある光景。

星くず音楽祭@国立はっぽんに、ひらげエレキテルとして参加して、6曲歌ってきました。演目は、「左目のブルース」「New Song」「正義の味方はいつも顔を隠している」「まあるいお月さま」「かわいい子猫ちゃん」「最後の日」。聞きに来てくださった皆さん、ありがとうございました。共演者のみなさんも、素晴らしい方々ばかり。男女3人組(実は男女+男?)Ity''sは、のっけからクオリティ高い演奏で、次に登場するひらげを慌てさせてくれました。懐深いパーカッションと切れ味鋭いギター、そして自由でのびのびとした女性ヴォーカル。感服しました。主催の月かげ星くず団は、相変わらず好調で、カヴァー2曲も含め、ばっちり決まったビート・ポップスでした。お店のスタッフみなさんも含め、皆さんお疲れさまでした。楽しい一夜でした!

ライブを終えて家に帰ったら、難病指定承認の知らせが。あきらめかけていただけに、うれしい。自己負担額の上限が2万円なので、すぐにはありがたみはないが、今後、薬が増えていくと、これなしではやっていけない。

2017年9月8日(金)

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今日のお絵描き①。キャブ・キャロウェイ

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今日のお絵描き②。稀代の女スパイ、マタ・ハリ。本名、マーガレータ・ヘールトロイダ・ツェレ。ジャワ島から来たという触れ込みで(実際はオランダ生まれ)、インドネシア語で「太陽」を意味する「マタ・ハリ」を名のり「オリエンタル・スタイル」でパリで一世を風靡したダンサーであると同時に、数えきれないほどのフランス軍、ドイツ軍の将校とベッドを共にした高級娼婦でもあった。そして、そこで得られた情報をもとに、第一次大戦中、二重スパイとして暗躍。1917年、スパイ行為によって、多くのフランス軍、ドイツ軍兵士を死に至らしめたとして銃殺刑となった。しかし、彼女のもたらした情報が、それほどの重要性のあるものであったことを示す証拠はどこにもない。

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今日のお絵描き③。顔にペイントしたエチオピアの女。エチオピア南西部にあるオモ渓谷には、顔や身体に独特のペイントを施すムルシ人スルマ人といった人たちが暮らしている。これらの人々のボディ・ペインティングの独創的な美しさは、この地域を3年以上、9回に渡って訪れたドイツ人写真家ハンス・シルヴェスターによって、写真に残された。参照: ハンス・シルヴェスター『ナチュラル・ファッション:自然を纏うアフリカ民族写真集]』

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今日のお絵描き④。デューク・エリントン

2017年9月7日(木)

「シムラ?」
「いや・・・」
「カトちゃん?」
「うーん・・・」
「ブー?イカリヤ?まさか、アライチュー?」
「いや、何か、もっと、こう・・・」
「何だ、仲本工事か」

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今日のお絵描き①。アイダ・オヴァートン・ウォーカー。20世紀初めに活躍した黒人女性シンガー、ダンサー。「ケイクウォークの女王」として知られ、黒塗り芸で一世を風靡したバート・ウィリアムズの相棒ジョージ・ウォーカーの妻でもあった。夫とウィリアムズの劇団で、女優として活躍。夫の死と劇団の解散後も、活動を続け、黒人版「サロメ」をブロードウェイのヴィクトリア劇場で上演し、高い評価を得た。1914年、肝不全により、34歳の若さで亡くなった。

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今日のお絵描き②。ジェイムズ・ブラウン

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今日のお絵描き③。発注があったので・・・「黒に鳥の羽根のついた帽子のお洒落なアニタ・オデイ

唐突に、変な詩を思いついた。寓意とか、裏の意味とかはありません。ただの物語です。

「戸締り」

ぼくが瞬きをしなくなってから
そろそろ3年が経とうとしています
朝、目を覚ましたら、ずっと開きっ放しで
夜、赤く充血した目を閉じるまで
休まる時がありません

ぼくが涙を流さなくなってから
そろそろ2年になろうとしています
瞬きをやめて、しばらくは涙が止まらず
流れるに任せていたら、涸れてしまったのか、ある日
何も出てこなくなりました

ぼくがものを見なくなってから
そろそろ半年になろうとしています
見えなくなったのではありません 目は始終開いているし
見ようと思えば見られるのですが 見ることを拒んで
手探りで歩くことにしました

ぼくが瞬きをしなくなってから
そろそろ3年が経とうとしています
明るいうち、開きっ放しの眼は
風が吹き抜ける穴のようです 夜になると
ぼくは雨戸を閉めて鍵をかけるように
まぶたを閉じて、横になります


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今日のお絵描き④。チャールズ・ミンガス

2017年9月6日(水)

詩神頼みのミューズ商売。

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今日のお絵描き。笑わないサッチモ

村松梢風川上音二郎〔下〕』(潮文庫、1985、1952)を読み終わった。「オッペケペー節」で一世を風靡し、日本の演劇を改革するべく、新劇をはじめた音二郎が、二度のヨーロッパ公演などを経て、妻・貞奴とともに演劇界の立役者になっていくまでが描かれた上巻に対し、下巻では功成り名を遂げた音二郎が、九代目市川團十郎との交流を深めたり、初代市川左團次亡き後、その息子・市川莚升(のちの二代目左團次)の後見人になるなどして、日本演劇界のフィクサー的な存在になっていく。一方で、音二郎自身も、翻訳劇を手掛けたり、劇場の因習を廃止したりして、俳優として、(俳優引退後も)座長・興行師として、日本演劇の改革に取り組み続けた。念願だった自分の劇場・帝国座の完成直後、48歳の若さで命を落としている(ぼくはもう、その年齢を超えてしまった)。音二郎が日本の演劇の中心にいた時代の話なので、自然、音二郎個人を超えて、日本の演劇、芸能(浪曲の桃中軒雲右衛門の話も)の近代史というべき内容も含んでおり、大変興味深い。

江古田マーキーに、ひらげエレキテルとして出演して、6曲歌ってきました。演目は、「New Song」「正義の味方はいつも顔を隠している」「まあるいお月さま」「かわいい子猫ちゃん」「左目のブルース」「最後の日」。聞いてくださった皆さん、どうもありがとうございました。共演は、達者なフィンガーピッキングで独自の世界を披露するスペッキオさん(2度目の共演)、女性ヴォーカルの声が出ないというアクシデントに見舞われながらも、クオリティの高い演奏を聞かせてくださった中前適時打のお二人。お疲れさまでした。

2017年9月5日(火)

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今日のお絵描き①。少女はお水汲んでくると言った。

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今日のお絵描き②。トミー・ジョンソン。大酒吞みのブルース・シンガー。

冷たい水のブルース(トミー・ジョンソン)

水をくれって言ったのに、あの女、ガソリンを持ってきやがった
水をくれって言ったのに、ガソリンを持ってきやがった
水をくれって言ったのに、ガソリンを持ってきやがった
なんてこったい、主よ

泣き叫んで、主よ、うちに帰れる日が来るんだろうかと思う
泣き叫んで、主よ、うちに帰れる日が来るんだろうかと思う
なんてこったい、主よ

駅へ行って、時刻表を見上げ、あたりを見回した
この東行きの列車はいつの間に出ちまったんだい?
なんてこったい、主よ

車掌に聞いたんだ 「貨物車に乗ってもいいですかね」
(一文無しでも貨物車に乗れるのかって聞きたかったんだけど)
そしたら、「ぼうず、切符を変買え、切符を買え
この列車はオレのもんじゃねえんだ」だとさ

「ぼうず、切符を買え、切符を買え
この列車はオレのもんじゃねえんだ」
「ぼうず、切符を買え、切符を買え
この列車はオレのもんじゃねえんだ」
なんてこったい、主よ

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今日のお絵描き③。スライ・ストーン

2017年9月4日(月)

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今日のお絵描き①。カワイこちゃんを描く喜びパート3。

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今日のお絵描き②。スライ・ストーン

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今日のお絵描き③。ジョンの魂

2017年9月3日(日)

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今日のお絵描き。麦畑の少女。


みんなでワイワイ コンサート~LOVE&PEACE~vol.42@荻窪Live Bar Bungaに、ひらげエレキテルとして参加して、5曲歌ってきました。演目は、「New Song」「正義の味方はいつも顔を隠している」「まあるいお月さま」「かわいい子猫ちゃん」「最後の日」。聞いてくださったみなさん、どうもありがとうございました。今回は、絵描きをカードにして、観客、共演者の皆さんに配るという新しい試みをしました。一見すると絵はがきのようですが、裏にはライブ・スケジュールなどが書いてあるので、はがきとしては使えません。全部そろえると、神龍が出てきます(嘘です)。

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共演者のみなさんは、素晴らしい方ばかりでしたが、なかでもお店のオーナでもあるプーカングァンさんの歌、力強いビートにのせて反原発の思いを叫ぶ栗原優さんのパフォーマンスが圧倒的でした(鈴木峻さんのサックスもぶっとい音で揺さぶられました)。やはり音楽はまず、響きだな、深い響きだなと思った次第。

2017年9月2日(土)

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今日のお絵描き①。アレサ・フランクリン

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今日のお絵描き②。ロバート・ジョンソン

2017年9月1日(金)

村松梢風川上音二郎〔上〕』(潮文庫、1985、1952)を読み終わった。「オッペケペー節」で人気を博し、妻・貞奴とともに新派劇の創始者となった川上音二郎の伝記小説。上巻では、博多に生まれた音二郎が、京都・大阪を中心に「オッペケペー節」で一世を風靡し、「演劇改良」を志し、「壮士芝居」と揶揄されながらも、注目を集めるようになっていった。しかし、国会議員に立候補して落選、続く新派劇合同の公演も失敗すると、妻・貞奴とともに半分死ぬつもりでヨットで東京から神戸を目指す。無謀な挑戦は世間の注目を浴び、音二郎人気は息を吹き返す。そんな矢先、十数人の劇団と渡米。全米各地で公演を行う。結果、二人の劇団員を病気で失う悲劇に見舞われながらも、アメリカ人の心をつかんでいく。さらに、ヨーロッパに渡り、イギリス王室の前でパフォーマンスを披露、パリ万国博にも参加してフランスのメディアに絶賛される・・・とにかく、破天荒な人生が面白い。下巻も楽しみ。

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今日のお絵描き。スリーピー・ジョン・エステス

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