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2017年6月12日(月)

しばらくぶりの仕事は、しんどいが、生きた心地がする。

明治学院非常勤「アメリカ研究」、前期第七回目。まずは2回連続して休講にしたことへのお詫びと経過説明。以下、すべての大学で同じことをくり返した。2週間前に返って、人種間結婚(あるいは人種間の性的関係について、復習する。南北戦争中の1863年、奴隷制を支持する民主党右派は、匿名「雑婚」(miscegenation)を称賛するパンフレットを出して、人種間の関係に対する人々のアレルギーを刺激しようとした。リンカーンは演説のなかで、「私が黒人の女を奴隷にしておかないからと言って、妻にするべきであるとするような、でっちあげの論理に反論しておく」と述べなければならなかった。それほど、人種を越えた性的関係に対する嫌悪はひどかったのである。

人種間の性的関係は、植民地時代から、法的にも、道徳的にも、罪とされてきた。白人女性が黒人の男性と関係を禁じた法律は、レイプ以外に考えられないとされたのか、あまり見られないが(黒人男性は残虐な形で罰を受けたはずである)、白人男性が黒人女性と関係を持つことを禁じた法律は各地にあったし、実際、むち打ちなどの罰を受けた白人男性の記録がいくつも残っている。にもかかわらず、大農場などでは、奴隷主が奴隷の女性とか関係を持ち、性欲を満足させると同時に、子どもを奴隷とすることで財産も増やすことが行われていた。大農場のような閉鎖された社会では、そうしたことは公然の秘密として受け流されていた。とはいえ、奴隷の女性との関係を知られることを、奴隷主がよしとしていたわけではない。

リベラルな姿勢で知られる第三代大統領トーマス・ジェファソンは、奴隷制は廃止されるべきだと考えていたが、一方で、自ら100人以上とも言われる奴隷を使う農場主だった。また、当時の白人の平均的な考えとはいえ、『ヴァージニア覚書』(1785)のなかで、ひどく差別的な黒人観を吐露している。そのジェファソンと奴隷の女性サリー・ヘミングスとの間に子供がいたという話は、ジェファソンの生前から囁かれていた。黒人作家による最初の小説であるウィリアム・ウェルズ・ブラウン『クローテル:大統領の娘』(1853)は、この噂をもとにした作品である。1990年代になって、ある黒人男性がジェフェソン家の血をひいていることがDNA鑑定によって明らかになると、この噂は信憑性を帯び、さまざまな議論を呼んだ。

サリー・ヘミングスは、ジェファソンの白人の妻マーサの異母姉妹であり、ジェファーソン家に嫁いだマーサに、お付きの奴隷としてついてきたのを、マーサが夭折した後、ジェファソンが愛人にしたようである。彼女とマーサの関係は、姉妹であり、幼馴染であり、奴隷主と奴隷であり、(マーサの死後とはいえ)正妻と愛人という、南部の「特殊な社会」を象徴する複雑なものだった。ジェファソンは公使としてフランスに渡る際も、サリーを同行させており、彼女が単なる奴隷主の性欲解消の道具でなかったことは伺われる。それにしても、すべての権力を手中に収めてた男と、何も持たない奴隷の女(男は女を好きなようにできる)の間に愛は存在し得るのかというのはたいへん難しい問題である。こうした二人の関係に焦点を当てて描かれたのが、バーバラ・チェイス=リボウの小説『サリー・ヘミングス』である。

19世紀前半のアメリカで、南部と北部が次第に対立を深めていく過程を追った。とりわけ、上院で定員2名が与えられる州への昇格では、新州における奴隷制を認めるかどうかをめぐって、南北が妥協を重ねることになった。奴隷制の北限を定めながら、ミズーリ州を奴隷州とすることを例外として認めた「ミズーリの妥協」(1820)にはじまり、ルイジアナ買収(1803)、テキサス併合(1845)、対メキシコ戦争(1846)などによって、爆発的に広がった領土が次々に州に昇格するたびに、南北は新州の取り扱いに苦慮した。1850年、カリフォルニアを自由州とする代わりに、逃亡奴隷法の強化が認められたことは、奴隷制に反対する人々に衝撃を与えた。また、1854年、カンザス・ネブラスカ州の行く末が、住民の選択に任されたことで、同地域は奴隷制賛成派・反対派が血で血を洗う内戦状態となる。この混乱のなかから、頭角を現した奴隷制反対論者ジョン・ブラウンが、1859年、ハーパーズ・フェリーで反乱を起こたことで、南北の対立は一層高ま深まりり、リンカーンの大統領就任を受けて、1861年、南部諸州がアメリカ連合国として独立を宣言し、アメリカは南北戦争へと突入していく。

國學院非常勤、前期第七回目。こちらも、休講の謝罪と説明から。「1stYear English」は、改めて分詞について。分詞が名詞を修飾する形容詞の役割をするものであることを強調した後で、しかし文型によっては、名詞に係っていくように訳しては、行けない場合があると、使役動詞/知覚動詞+O+現在分詞・過去分詞のパターンを説明。「R&W」は、バラク・オバマ、2008年大統領選勝利演説を読む。「それ(選挙運動)、大義のために5ドル、10ドル、20ドルといったお金を出すために、なけなしの貯えに手をつけた働く男女によって築かれたのだ。それは、彼らの世代の無関心という神話を拒否し、少ない給料とより少ない睡眠しか与えてくれない仕事のために、家や家族を後にした若い人びとから力を得た」

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