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2017年1月16日(月)

パリ全乳。

明治学院非常勤「アメリカ研究」、後期第十四回目(最終回)。前回紹介したリチャード・ライト『アメリカの息子』(1940)を原作とする映画は、1951年、1986年の2回、製作されている。1951年版には何と、当時40代後半のリチャード・ライト自身が20歳という設定のビガー・トーマスを演じている(年齢の問題はさておき、作者の執念が感じられる熱演ではある)。煽情的な51年版とは対照的に、淡々とした描き方の86年版のほうが、現実味があって、かえってコワイ。2つの映画から、ビガーがメアリーを死なせてしまい、地下室のボイラーで死体を焼く衝撃的なシーンを見た。ビガーの抱く恐怖心がどのようなものか、なぜ彼は猟奇的ともいえる犯罪に追い込まれていったのか、この作品を理解するうえで、もっとも重要なポイントだと思う。

映画のあとは、アリス・ウォーカートニ・モリソン、2人の黒人女性作家を紹介。それまで顧みられることの少なかった黒人女性の、黒人として、女性として、二重に差別される黒人女性の体験を、黒人男性の暴力も含め赤裸々に描いた『カラー・パープル』(1982)などのウォーカーの作品は、衝撃を持って迎えられた。黒人男性の暴力的ステレオタイプを助長するとの批判もあったが、それでは黒人女性の体験をいつ誰が語ればいいのか?「ウーマニスト」を標榜する(「フェミニスト」ではなく)ウォーカーは、白人女性中心の女性解放運動を「みんなのもの」にすることを目指しながら、女性器切除などさまざまな問題に積極的に関わっている。

一方のトニ・モリソンは今のところ、ノーベル文学賞を受賞した唯一のアフリカ系アメリカ人である。ウォーカーが登場人物が作者に憑依するシャーマン的な印象を与えるのに対し、モリソンはさまざまな物語をつづれ織りのように組み合わせる語り部のような作家である。その手法は作品によって違うが、デビュー作の『青い目が欲しい』(1970)の、幸せな白人家庭のポートレイトが三回くり返されるうちに、文字が分解され、ゲシュタルト崩壊を起こす冒頭からして、実験的で、かつリアルな重みをもっている。授業ではこの他、奴隷になるくらいならと殺した娘が亡霊?になって帰ってくる『ビラブド』(1988)のストーリーを紹介。

というところで、今年度の講義は終わり。学生諸君、1年間、ご清聴ありがとう。

國學院非常勤、後期第第十二回目。6限は、『ジャズの誕生』をテキストとするリーディング。ジミー・スミスウェス・モンゴメリーのデュエット・アルバムを聞きながら、授業開始。テキストの内容は、「南北戦争後、北部の偏見の到来にともない、彼ら(黒人クレオール)の没落はゆっくりだが完全なものだった。彼らはより肌の色の黒い兄弟に加わることを余儀なくされ、あとで見るように、おそらく最も明白には技術の点で、ジャズの誕生に貢献するものを多く持っていた」 7限はバラク・オバマ、2008年大統領選勝利演説を読む。テキストの内容は、「利用すべき新しいエネルギー、創出すべき新しい仕事、建設すべき新しい学校、直面すべき脅威、修復すべき同盟関係があります。これからの道のりは長く、私たちが登る坂は険しいでしょう。私たちは一年、いや、それどころか、任期中にすら、そこにたどり着けないかもしれない。しかし、アメリカよ、私は今夜ほど、そこにたどり着けると希望を持ったことはない。わたしは皆さんに約束する。私たちはひとつの民として、そこにたどり着くと」 最後の"We as a people will get there"の "people"は、日本語に訳すことが難しい単語だ。「国民」や「人民」では、聖書やアフリカ系アメリカ人の歴史を感じさせない薄っぺらな訳になってしまう。ちょっと古い感じがするが、「民」と訳すのがいいのではないかと思う。ここには聖書の「約束の地」はもちろんのこと、それを前提としたマーティン・ルーサー・キング最後の演説における呼びかけ、「私たちは皆さんに知っていただきたい。わたしたちはひとつの民として、約束の地にたどり着くと」も、響いているのではないかと思う。

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今日のお絵かき。ロジャー・マッギン

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