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2016年10月25日(火)

ハートのエースと鳩の餌。

日本女子大非常勤、後期第六回目。3限、「米文学随筆評論演習」は、ハリエット・ジェイコブズの奴隷体験記を読む。第19章「こどもたちが売られる」。リンダ(ジェイコブズの仮名)を探しに行ったドクター・フリントが、ニューヨークから手ぶらで戻ってくる(リンダは近所に隠れているのだから、当然)。友人たちはこの機会を逃さずに、リンダの子どもたちを売るようフリントに働きかける。奴隷商人の力を借りて(奴隷商人はウィリアムのことを「気に入って」いたらしい)、リンダの息子ベニーと娘エレン、弟のウイリアムを書くことに成功する。フリントをだますために、真相を知られていなかったナンシーおばさんに、ベニーは売られていく悲しみを演技してみせる(頭のいい子だ!)。祖母はこれがフリントを騙すための芝居だと知らされていたが、孫と息子が連れ去られるのを見て、あまりに真実味のある光景に気を失う。祖母はのちに、自分の家で3人と感動の再会を果たす。リンダは事の顛末を知らなかったが、ベティから話を聞き、喜びにむせび泣く。

4限、「アフリカ研究」は、ベンベヤ・ジャズ・ナショナルライブ動画を流しながら、マリ/ギニアの話。先週取り上げたサリフ・ケイタが、王族の血を引いていたことを思い起こしてもらい、その先祖にあたるマリ王国の始祖スンジャータ・ケイタの伝説を小芝居を交えて紹介した。

ある日、小国であったマリ国の領地に、隣国の狩人が足を踏み入れる。他国で狩りをしたら、獲物の一部をその国の王に献上するのが礼儀とされていた。狩人はマリ国の王、のちにスンジャータの父となるナレ・マガーン・カンテに謁見する。王は獲物を差し出した狩人の正直さに感心し、歓待する。占いを得意としていた狩人は、王の未来を占う。王は世にも醜い女と結ばれ、二人の間に生まれた息子が、この地域一帯を束ねる強大な王となる・・・すでに美しい妃と、跡取りの王子がいた王は、それを宴のうえでの戯れと聞き流した。

それから、数年後、狩人の国は大変なことになっていた。巨大なバッファローが現れ、勇敢な狩人や戦士を次々と殺していた。マリ国からも、バッファローをしとめようと、二人の狩人が派遣される。二人はサバンナをあちこち探したが、バッファローは見つからない。あきらめかけて木の下に座り込んだところ、木の枝から鳥の声が聞こえる。「この道をまっすぐ行くと、バッファローのことを知っている人がいるよ、ピヨピヨ」 鳥の言葉に勇気づけられた二人がそちらの方向に向かうと、身体の大きなおばさんが水浴びをしている。ああ、あの人だ!「おばさん、バッファローのことを知りませんか?知っていたらおしえてください」「バッファローを探しに来たのかい。バッファローね・・・そう・・・」

「私がそのバッファローだよ!!」

逃げようとする二人をつかまえて、バッファローは言う。「そろそろ人間を殺すのにも飽きた。お前たちに殺されてやるよ。そのかわり、私を殺して、狩人の国に行ったら、狩人の国の王は何でも褒美をとらせようというだろう。そしたら、村の娘が一人欲しいというんだよ。そして、村の娘のなかから、いちばん醜いのを選ぶんだ。それが私の娘だからね」 二人が震えながら話を聞いていると、「さあ、お逃げ。この袋をやろう。私に追いつかれそうになったら、この袋の中にあるものを順番に投げるんだよ」

二人は必死で逃げた。バッファローに追いつかれそうになったとき、袋の中をまさぐると、木でできた糸車が出てきた。それを投げると、大きな森が現れて、しばらくバッファローの行く手を阻んだ。だが、しばらくすると、バッファローは森を越えて追ってくる。袋の中をまさぐると、今度は石が出てきた。石を投げると、今度は巨大な石山が姿を現した。ところが、バッファローは石山すらものともせずに、追ってくる。最後に袋の中から卵を投げると、卵は泥沼に姿を変え、足を取られたバッファローを狩人の矢がしとめた。

バッファローを射止めた二人は、狩人の国で歓待される。何でも褒美をとらせようと言われて、二人は村の娘をひとり欲しいと言う。そして、バッファローとの約束通り、世にも醜い娘を選ぶ。その娘こそがバッファローの娘ソロガンであった。マリ国に帰ると、狩人の占いを覚えていた王が、ソロガンを召し上げる。すったもんだの末(何しろ、相手はバッファローだから)、結ばれた二人の間に息子が生まれる。その名はスンジャータ。

ところが、スンジャータは強大な王どころか、歩くこともできず、言葉もしゃべれない。お付きの鍛冶屋に作らせた鉄製の杖も、スンジャータが立ち上がろうとするとぐにゃりと曲がってしまう。そんなとき、スンジャータ誕生を予言した狩人がやってきて言う。「しなやかな枝で杖を作りなさい」 しなやかな枝で杖を作ってみると、その杖を使ってスンジャータはすくっと立ち上がったばかりか、巨大なバオバブの木を引き抜いて、母ソロガンのもとに運んで見せたという。

と、ぼくがグリオになってみせたところで、本物のグリオ=バズマナ・シッソコンゴニを演奏しながら、スンジャータの物語を語る録音を聞き(あとで、リアクション・ペーパーを読むと、渋い声にしびれたという学生も少なからずいて、びっくり)、スンジャータ・ケイタの生涯が織り込まれたダニ・クヤテ監督の映画『ケイタ!』(Keïta! l'Héritage du griot 、1995)を一部、見た。

このあと、前回、紹介したサリフ・ケイタ擁するアンバサダー・インターナショノー「マンジュー」が、ギニア独立の父であり、泣く子も黙る独裁者でもあったセク・トゥーレに捧げる曲であることを話した。セク・トゥーレは地元の音楽を奨励する政策をとっており、サリフ・ケイタらミュージシャンも支援を受けた。そのために、セク・トゥーレが独裁者として非難を浴び始めた時期に、あえてトゥーレに捧げる歌を歌ったのだ。このことは、サリフ・ケイタがグリオの褒め歌の伝統を引き継いでいたことを示すと同時に、独立の英雄でもある「独裁者」に対する評価が一つに定まらないことを示している。冒頭に流したベンベヤ・ジャズナショナルも、ギニア音楽を奨励するコンテストで、セク・トゥーレの先祖にあたると言われるサモリ・トゥーレの生涯を歌った「過去へのまなざし」で優勝している。

5限、「アカデミック・ライティング」。それぞれのエッセイを指導。ウェブからの引用は難しくて、ぼくもわからないことが多い。勉強し直さなくては。

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