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2016年3月14日(月)

「館さん、これ空っぽですよ」「中ないで〜♪」

Black_cargoes_2

ダニエル・P・マニックス黒い積荷』(Black Cargoes: A History of the Atlantic Slave Trade、1962、土田とも訳、平凡社、1976)を読みおわぅた。マルカム・カウリー協力のもと書かれた間大西洋奴隷貿易に関する先駆的な研究書。イギリス軍による奴隷貿易鎮圧が、西アフリカ沿岸における制海権の確立とアフリカの植民地化につながったことが書かれてないなど、限界はあるものの、奴隷にされたアフリカ人はもちろん、奴隷商、船長、平水夫、アフリカの王たち、仲買人、解放奴隷、奴隷制廃止論者、政治家、海軍士官、農場主といったさまざまな視点から、奴隷貿易を多角的に捉えようとする画期的な試みであったことは間違いない。

読んでいて感じたのは、歴史は何か大きな陰謀があって動かされるものではないということ。ひとりひとりの人間は、それぞれ目先の利益のために、奴隷貿易に関わっていたにすぎない。ひとりひとりの無自覚な動きが、全体として、思いもよらぬ方向に歴史を動かしていく。例えば、アフリカの奴隷の多くは、当初、近隣国との戦争のなかで獲得された捕虜であり、労働力というよりも、交換条件としての人質だったはずだ。アフリカの王たちは、それを白人に譲りわたしていたにすぎない。

しかし、「新世界」開発のために、労働力が際限なく求められるようになると、奴隷は交渉を有利に進めるための手段ではなく、「商品」という目的となり、奴隷にする人間を捕えるために、戦争や誘拐が行われるようになった。そうやって捕えた奴隷の対価として、王たちは銃や火薬を手に入れ、再び近隣に戦争をしかける。王たちにしても、奴隷商にしても、目先の利益で動いていたにすぎないのだが、その結果、奴隷や戦争の持つ意味を変え、アフリカ社会を根底から揺るがす方向に歴史を動かした。

歴史は無自覚なひとりひとりによって、動かされる ― 今の世界でも、同じことがいえるのではないか。

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