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2016年1月18日(月)

ケロヨン焼きを食べて‥胃のなかの蛙。

Richardwright_2

明治学院非常勤「アメリカ研究」、後期第十五回目(最終回)。40年代以降のアメリカ黒人文学について。前回の最後に、リチャード・ライトを紹介して、『アメリカの息子』(1940)の内容に触れた。黒人青年ビガーが白人女性を殺害、ボイラーで死体を焼き、逃走中に道連れにした黒人の恋人をも殺すという衝撃的な内容には、リアクション・ペーパーでも「ビガーは人種差別社会の犠牲者だ」というものから、「ビガーの行為は正当化できない」というものまで、さまざまな反応があった。そのどれもが間違ってはいない。ビガーがメアリーを殺したのは、泥酔した白人女性と寝室にいらるところを見られるのを恐れたからだし、その背景には「黒人男性=レイプ犯予備軍」であるという人種偏見がある。だからといって、ビガーの行為は正当化できない。人種差別社会に生まれたからといって、必ず犯罪を犯すわけではないのだから。

ただ、ライトはもちろん、ビガー自身もメアリーの殺害を正当化しようとはしているわけではない。ビガーは「白人女性と寝室にいればレイプ犯に間違われる」という論理的な判断から、メアリーを殺したわけではない。もしそうであったら、ビガーは人種差別を理由に、自らの犯罪を正当化していることになる。実際は、ビガーは理解を超えた恐怖に囚われて、犯罪に飲み込まれていったというのが正しい。この恐怖こそが、人種差別主義社会で黒人が植えつけられてきたものであり、そのことは善意から弁護を引き受けた白人弁護士には理解できない。最後の裁判のシーンで、弁護士がビガーの犯罪が人種差別社会の帰結であることを論証しようとすればするほど、ビガーの孤独が浮かび上がってくるのはそのためだ。

続いて、ラルフ・エリソンと『見えない人間』(1952)。見えない人間とはどういう存在なのか、作品序盤の白人の男とぶつかって相手が自分を見ていないことに気づくシーンを例に説明した。話をしながら、「いくらなぐっても傷つけたことにならない,そんな不安が君の黒髪をぬらすよ」という友部正人「ストライキ」の歌詞を思い出した。さらに、ジェイムズ・ボールドウィン。継父との葛藤を描いた自伝的小説『山に登りて告げよ』(1953)でデビューしたボールドウィンは、黒人であることと同時に、ゲイであることを重要なテーマとした作家だった。『ジョバンニの部屋』(1956)は、ゲイの体験を正面から描いて、黒人の作家は「黒人問題」を描くものという思い込みに衝撃を与えた。さまざまな人間関係が交錯する『もう一つの国』(1962)は、ボールドウィン作品の集大成ともいうべき作品である。しめくくりに、ボールドウィンが先鋭的なジャズ・ミュージシャンをバックに自作詩の朗読した『ア・ラヴァーズ・クエスチョン』(1991)から、「ア・ラヴァーズ・クエスチョン・パート1」を聞いた。

最後に、70年代以降、特に注目を集めるようになった黒人女性作家について。アリス・ウォーカーと『カラー・パープル』(1982)。詩集を出版した後、黒人男性の黒人女性に対する抑圧と暴力を赤裸々に描いた『グレンジ・コープランドの第二の人生』(1970)で小説家としてデビューしたウォーカーは、『カラー・パープル』でも黒人男性の暴力を告発しており、そのことが黒人男性のステレオタイプを助長すると批判されることも多かった。しかし、それは二重の意味で差別されてきた黒人女性の現実を明らかにするために必要なことであった。一方、1993年、ノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンは、文学的技巧を駆使しながら、黒人社会をさまざまな角度から語る語り部のような存在だ。奴隷にされるぐらいならと殺した娘が、亡霊のような姿になって帰ってくる『ビラヴィッド』(1988)は、そんなモリソン作品の典型である。

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