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2015年12月19日(土)

アサーッ(ベイブリッジより)。

Morning

羽田から8時過ぎの飛行機で、MESA(多民族研究会)全国大会@西南学院大学に参加すべく、福岡へ。第一日目は研究発表4つに、講演が1つという充実した内容。

まずは上智大学のハーン恭子先生が、センチメンタル・ナラティブの20世紀における後継として、ディズニー映画『ダンボ』(1941)を解析。とりわけ、黒人のステレオタイプ的な擬人化であると批判されることもあるカラスたち(一羽は「ジム・クロウ」という名前)や、黒人労働者の表象が、むしろ黒人差別に対する批判や、ディズニースタジオでも激しくなっていた労働争議に対する共感が隠されている一方で、空を飛ぶダンボの姿が戦闘機に重ね合わされ、戦時下の状況を反映している点が興味深かった。

続いて、駒澤大学の川崎浩太郎先生が、エミリー・ディキンソンの詩をColor-Caste-Denominationといったキーワードから読み解く。ディキンソンの詩に見られるアイルランド移民対する愛憎や、出版という「金儲け」を忌避する傾向、また、人種よりも衣装のように脱ぎ捨てできる階級に価値を置くスノビッシュなポピュリズムについて語られた。個人的には、アイルランド移民に対する先住者の反応が興味深かったし、本質的ではないが重要なアイデンティティを衣装に喩えるところが、ゾラ・ニール・ハーストンを連想した。

Chilkat

京都工芸繊維大学の林千恵子先生は、カナダの先住民クリンギットの間で受け継がれてきたチルカット・ブランケットについて。独特の視点から、彼らにとって身近な動物を図案化したデザインは、氏族の紋章であると同時に、それぞれの動物にまつわる神話と結びついている。また、クリンギットが周辺民族からブランケットのつくり方を学び再現していった歴史は、文化の混淆性の証左であり、同じような解明と再現の作業が、シェリル・サミュエルやジョージ・エモンズといった研究者によってくり返されている点でも興味深い。

最後に関東学院大学の西原克政先生が、ウォレス・スティーヴンスの「アイスクリームの皇帝」と、アンデルセン童話「裸の王様」の連想を示唆しながら、「カント」における引用などを中心に、エゾラ・パウンドの話をされた。しばらく現代詩とはご無沙汰しているぼくには、難しい話も多かったが、パウンドってちょっと面白そうだなと思わせるには十分だった。

休憩をはさんで、九州大学・太田好信先生の講演「アイデンティティのアフターライフ 歴史において他者と相対する倫理へ向けて」。近年、批判的に言及されることの多い「アイデンティティの政治」だが、「どんな立場からものを言っているのか」を問う意義は決して失われていない。支配と抑圧の問題を単なる論理の問題に置き換え、アイデンティティの政治を否定することは、抑圧する側のアイデンティティの隠蔽につながる。歴史の外に立ち位置は存在しないという基本的な姿勢を、文化人類学者としての豊富な知識と経験をもとに、グアテマラ、ハワイ、アイヌとシャモ、ウチナーとヤマトゥといった様々な例を挙げながら語られた。

懇親会のあと、西新の町で飲む。西原先生と、ポール・サイモンの話などで意気投合。お店に帽子を忘れてきてしまったけど、いい夜でした。

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