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2014年12月12日(金)

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リリアン・E・スミス『今こそその時』―「ブラウン判決」とアメリカ南部白人の心の闇』(Now is the Time, 1955、廣瀬典生、彩流社、2008)を読み終わった。リリアン・E・スミスはジョージア州クレイトンを拠点に、リベラルな立場から活動した南部の女性作家。本書は、1954年のブラウン判決を受けて書かれた評論『今こそその時』に、翻訳者による長めのスミス論を加えた構成。

「分離すれども平等」というプレッシー対ファーガソン判決を覆し、公教育における人種分離を違憲としたブラウン判決は、分離教育が黒人生徒に及ぼす心理的な影響に踏み込んだ点で画期的だった。スミスはさらに、白人生徒が被る心理的な悪影響にも言及する。人種隔離によって、白人の子供たちは隣人を思いやる想像力を損なわれる。そのことは長い目で見て、南部の良心を決定的に損なうことになる。

ブラウン判決を支持する論に加えて、人種統合を望む白人が具体的にどんな行動をとることができるかというガイドライン、人種差別主義者からの疑問に答えるQ&Aがつけられている。厳しい共産主義批判には、冷戦、赤狩りという時代が感じられるが(スミスは共産主義国の「現実」と、アメリカ民主主義の「理念」を比べている。同じように、東側陣営でも、共産主義の「理念」と資本主義の「現実」を比較していたことだろう)、当時の南部にあって、ここまで真正面から人種統合を支持することは、勇気がいることだっただろう(スミスは3回にわたって、自宅を放火されている)。

翻訳者によるスミス論は、ポストコロニアルを先取りした作家としてのスミスの生い立ち、作品、思想さまざまな面について詳細にフォローしており、大変勉強になった。なかでも、『夢を殺した人たち』(1949)における南部白人論、人種を越えた恋愛を描いた小説『奇妙な果実』(1944)が印象に残った。読んでみようと思う。

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