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2014年12月13日(土)

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立命館大学にジェイムズ・ピーターソン先生の講演「アンダーグラウンドの底力:ヒップホップとアフリカ系アメリカ人文化」を聞きにいった。オールド・スクールから現在まで、ヒップホップの歴史を辿りながら、その「アンダーグラウンド」な力を「地下鉄道」などアフリカ系アメリカ人の歴史、リチャード・ライトラルフ・エリソンアミリ・バラカなどの黒人文学と結びつけ、明らかにするもの。「アンダーグラウンド」という言葉で語られているのは、コマーシャルな価値には収まらない政治性を持った作品ということだろうか。

今回の講演では歌詞の政治性に焦点が当てられていたが、ヒップホップがラップ・ミュージックだけに収束するものではないことを考えると、「アンダーグラウンド」性は歌詞以上にグラフィティに典型的に見られる方法論(「取り戻すこと」=reclaiming)にあるのではないかと思われる。グラフィティが支配層によって合法的に占有された空間を取り戻すことだとすると、ラップ・ミュージックでそれに相当するのは、サンプリングということになるだろう。グラフィティが違法な落書きとスレスレのところに存在するように、サンプリングの場合も著作権との関係で危うい問題を抱えている。ピーターソン先生は、サンプリングを白人によって搾取された黒人文化を「取り戻す」ことと捉えているようだったが、黒人と黒人、あるいは黒人とアフリカやアジアの人びとの間でサンプリングが行われた場合、問題はそれだけではすまないのではないか。

黒人研究の会12月例会をはさんで行われた懇親会で、そんな疑問を先生本人にぶつけてみた。黒人の作品を黒人がサンプリングする場合の著作権の問題。もちろん、著作権料は支払われるべきなのだが、その前に著作権を持つべき人が持っていないという問題を解決すべきだ、という答えが返ってきた。例えば、ヒップホップでサンプリングされることの多いジェイムズ・ブラウンの録音のなかには、JB本人が著作権を持っていないものがたくさんある。著作権料はレコード会社の白人の懐に入る・・・もちろん、それはブルースの時代からの根深い問題であり、だからこそ、サンプリングやグラフィティの「取り戻す」という戦略が有効なのだろう。しかし、例えば、アフリカの伝統音楽をサンプリングする場合はどうなのか。

ピーターソン先生はヒップホップとアフリカ系アメリカ人文化の専門家で、メディア論の専門家ではないから、これ以上聞いても、「もちろん、著作権料は支払われるべきだ」という答えしか返ってこないのは当然だったかもしれない。もう少し、アフリカ系アメリカ人の文化的状況に関連づける形で質問すれば良かったか。例えば、逆に白人が黒人の音楽をサンプリングした場合はどうなのか? 実際、フランスのグループがロバート・ジョンソンの録音をそのまま使った例があった。その場合は、ロバート・ジョンソンに対する敬意を払って使っていたのだと思うが、もしそれが、人種差別的な文脈に使われたら? そうなると、著作権料という「お金」の問題だけではなくなるし、原作者が使われたくない文脈で使うという意味では、黒人の側も加害者となる可能性がある。

ぼくの英語能力の不足のせいもあって、そこまで食い下がれなかった。とはいえ、講演は素晴らしいものだったし、会場をうめた若い学生の熱気はすごいものがあった。今の学生も知識に飢えている。テーマとその提示の仕方によっては、これだけの聴衆が集まるのだ。ピーターソン先生と立命館のスタッフのみなさんに敬意を表したい。

下は講演のなかで紹介されていたB・B・キングをフィーチャーしたBig K.R.I.T.の「プレイング・マン」。リンチから逃げる黒人が歌詞のテーマになっている。ちなみにB・Bの演奏はサンプリングではなく、この録音のために新たに行われたもの。ここに「アンダーグラウンド」な力があるというのは、よくわかる。この曲を知れただけでも、聞きにいってよかった。


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