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2014年7月21日(月)

ぼくは骨太というより、羽布団ですが・・・

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明治学院非常勤前期第十五回目(最終回)。最後に19世紀までのアフリカ系アメリカ人の文学を扱う。奴隷制時代のアフリカ系アメリカ人はその多くが奴隷であり、読み書きができなかった。そうした状況は奴隷解放後もあまり変わらなかった。そんななか、アフリカ系アメリカ人はスピリチュアルやブルースの歌詞や民話といった口承文化のなかに言語表現の場を求めた。そこから、前回取り上げたロバート・ジョンソンの歌詞のような、すぐれた「文学」が生まれた。

アフリカ系アメリカ人による書かれた「文学」も、限定的ながら存在した。例えば、フィリス・ホィートリー。7~8歳の頃に西アフリカから連れ去られた黒人の少女。ぼくらはこの授業で、奴隷として拉致されるということがどういうことか学んだ。奴隷制のなかの、不衛生で非人間的な環境も見てきた。彼女は7~8歳でそれを経験してアメリカにやってきたのだ。ただし、彼女を買ったのは南部の大農場主ではなく、北部ボストンの富裕な商人ホィートリー氏だった。ホィートリーはフィリスに読み書きや、聖書、文学などを教えた。少女は10代後半で詩を書きはじめ、その詩が白人たちの間で評判を呼んだ。

しかし、多くの白人は「野蛮で」「愚鈍な」黒人の少女が難しい韻律を駆使して詩を書くことを信じようとしなかった。有名な肖像画の彼女は、考え事をしながら何かを書いている。白人たちにとって「考えながらものを書く黒人少女」は、「絵を描くゾウ」と同じ、ありえない存在だった。真相を確かめるために、州知事・副知事、ボストン政財界の大物による面接まで行われた。フィリスは詩のなかで、奴隷制度の非道を訴えたわけではない。むしろ、異教徒の国から連れ出してくれたことを感謝し、ひたすら黒人に対する偏見をなくすよう訴えている。しかし、考えながら何かを書くフィリスの存在自体が、白人の偏見に一撃を加えたのだ。

黒人は考える!

奴隷制時代のアフリカ系文学の重要なジャンルとして、近年注目を集めているのが、奴隷体験記である。奴隷制反対運動のなかで、奴隷制の非道さを訴えることを目的として、元奴隷自身による自伝が数多く書かれた。代表的なものとしてはオラウダ・エクィアーノフレデリック・ダグラスハリエット・ジェイコブズの自伝などがあり、どれも日本語訳が出ている。ただし、船乗りとして世界の海をかけめぐったエクィアーノの体験は、むしろ奴隷の体験としては特殊なものかもしれない。

読み書きを学び、自分自身を見つめ直すことによって、精神の隷属化から自分を解き放ち、成長していったダグラスの物語は、奴隷体験記のひとつの典型といえるだろう。また、数少ない女性の奴隷体験記として、奴隷主からの執拗なセクハラ、女主人の嫉妬に悩まされ、子供を気にかけながらも北部に逃亡するジェイコブズの物語には、男性とは違う経験が反映されている。ベースになっているのは、感傷小説の伝統だが、感傷小説のハッピーエンドが「結婚」であったのに対し、奴隷であるジェイコブズに「結婚」という結末はありえなかった。彼女にとってのハッピーエンドは「逃亡」だったのである。この他にも、最近映画化された(『それでも夜は明ける』)ソロモン・ノーサップの自伝などがある。

最後に、トーマス・ジェファーソンと黒人女性の間に子供がいたという「噂」(のちにDNA鑑定によって事実であると証明された)をもとに書かれた黒人初の(正確には最初に出版された)小説、ウィリアム・ウェルズ・ブラウンクローテル、もしくは大統領の娘』を紹介。ナット・ターナーの反乱なども絡んだ物語の背景には、トラジック・ムラート(悲劇的な混血娘)の伝統がある。白人の同情を誘うために、主人公を一見白人に見える美しい混血娘にするという手法である。もちろん、その裏には、「美しい混血」でない人は何をされてもいいのかという残酷な皮肉がある。とはいえ、奴隷制の非道を訴えるために、こうした表現が求められたことも事実である。

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授業を終えてすぐ、自由が丘へ。フルハシユミコさん企画「骨太の音楽」@自由が丘マルディグラに、ひらげエレキテル+しびれる機械として参加。新曲「卑屈な目をしたマリー」には、フルハシさんに馬頭琴で参加してもらいました(サイコー!)。しかし、ビデオカメラの不調で、この貴重なセッションの記録が残されていなかったのが残念。出演者は他に、まさに骨太でユーモラスなトピカル・ソングを歌う土田浩司さん、可憐な高音でときに官能的な歌を歌うガット・ギター弾きがたりの小暮はなさん、そして、馬頭琴/ダルシマーのフルハシさんとベースの竹内さん、尺八の平野さんによるユニット。素晴らしい演奏が目白押しで、しびれました。最後はみんなで「それはスポットライトではない」を歌って幕。飲みすぎるほどにステキな夜でした。

ちなみにぼくらの曲目は、「わたなべくん」「baby」「かわいい子猫ちゃん」「行こうよ」「ラーメンブギ」「卑屈な目をしたマリー」「最後の日」。来てくださった方、聞いてくださった方、ありがとうございました。

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