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2014年7月14日(月)

倦怠期フライドチキン。

明治学院非常勤、前期第十四回目。今回は、ブルースの話。奴隷コミュニティという「集団」の音楽であったスピリチュアルやワークソングに対し、ブルースは「飢える自由」を手にした解放奴隷たちによる「個人」の音楽である。だからといって、ブルースがコミュニティと無縁の音楽だというわけではない。ブルースはコミュニティ共通の文化的母胎から歌詞やブレーズを借りて、貧困、饑え、差別、失恋といった個人の体験を歌い、コミュニティの人々の共感を求める音楽である。また、憂鬱な歌、悲しい歌と思われがちなブルースだが、否定的な感情を歌うだけではブルースにはならない。「ブルース(憂鬱)」を吹き飛ばす逆説的な力が、音楽としてのブルースにはなければならない。詩人ラングストン・ヒューズが、死を決意した男が線路に横たえた頭を汽車が来ると引っ込める、という歌詞を例に示したブルースの本質とはまさにこの力に他ならない。

ブルースをはじめとするアフリカ系アメリカ人の音楽を、「明るい」「暗い」で峻別しようとすると、とんだ落とし穴に陥ることになる。一見明るい音楽のなかに底なしの暗闇が隠れており、暗い憂鬱のなかにそれを覆す生命力が控えている。こうした二面性はアフリカ系アメリカ人の音楽だけのものではない。例えば、沖縄の音楽。踊り出したくなるような陽気な音楽という印象が強い。しかし、その背後には、差別と戦争の暗く重い歴史がある。沖縄のボードビリアン=小那覇舞天は、沖縄戦で生き残った人々に「命のお祝いをしましょう」と言った。戦火をくぐり抜け、これだけの人が生き残った。生き残ったものたちが、元気を出さないでどうする。笑いに満ちた舞天の歌には底なしの闇があり、またその闇を闇で乗り越えていく逆説的なパワーがある。これもまた、ブルースだ。

ここで、ロバート・ジョンソンの「カム・オン・イン・マイ・キッチン」と「クロスロード・ブルース」を聞く。十字路の悪魔=レグバ?(信じる信じないはあなた次第です)の話などもしながら、歌詞を味わいつつ、スライドギターの音に耳を傾ける。「風がうなるのが聞こえるかい?」って囁いた後に、スライド・ギターでちゅちゅ~うんって、風の音を表現していたね・・・スライド・ギターは音程の縛りがないから、いろんなものを表現できる。汽車が走る音、風の音、もっといやらしい指の動き・・・

精神的なことは別にして、音楽としてのブルースはどんな特徴を持っているだろうか。まずはブルーノート音階。「ドレミファソラシド」の「ミ」と「ソ」と「シ」の音が半音近く下がっている。半音「近く」というのがミソで、この中間音を出すために、ギターリストはスライド奏法やチョーキングを使う。半音以下の微分音が出せないピアノの場合、隣あった音を素早く連続して弾いたり、不協和音を出したりすることで、微分音が聞こえたような印象をつくりだす。加えて、ブルースのコード進行は、セブンスの音を伴うスリーコードであることが多い。セブンスのコードは不安定で、別のコードに移行する印象を与える。ブルースに常に動いている音楽というイメージがあるとしたら、このためかもしれない。こうしたコード進行の場合、歌詞はAA’Bというような構成になっている。つまい、AとA’で同じようなことをくり返し、Bでオチをつけるような展開だ。

しかし、こうしたコード進行や構成は、すべてのブルースに当てはまるものではない。ジョン・リー・フッカーのブギのように、ほとんど1コードか2コードでさしたる展開もなく進むプリミティヴなブルースもあれば、テンション・コードを多用した複雑なジャズのブルースもある。次の曲なんかは、ちょっといたずらを仕掛けてあるんだけど、わかるかな?

わかっただろうか?これはさっき聞いたロバート・ジョンソンの「カム・オン・イン・マイ・キッチン」、それもロバート・ジョンソン本人の歌に演奏をかぶせて別の音楽を作ってしまった、反則ギリギリの録音。コード進行なんかも変えてちょっとオサレになってるけど、やっぱりブルースって感じがする。コード進行は違っても、ブルースはできる。ということは、ブルースの音楽的本質は・・・ブルーノート音階、あるいはモードにあるんじゃないかな。モダン・ジャズのミュージシャンがコードの複雑な展開に飽きてモードに移行するよりも遙か前から、ブルースはモーダルな音楽だったんだ。

この後、ブルースの地域差を見るために、鬱々としたミシシッピ・ブルースとは対照的なテキサスのライトニン・ホプキンスの豪快な演奏を収めたビデオを見た。

最後にジャズの話に入って、ジャズのとらえどころのなさ、ニュー・オリンズがジャズ発祥に大きな役割を果たした理由などについて話し、ルイ・アームストロングのビデオを見て、幕。

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