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2013年12月21日(土)

Neobk1475584

ハリエット・アン・ジェイコブズある奴隷少女に起こった出来事』(Incidents in the Life of a Slave Girl、1861、堀越ゆき訳、大和書房、2013)を読み終わった。女性による奴隷体験記の代表的作品。新訳が出たのは知っていたが、本屋に平積みになっているのを見て仰天。先日の多民族研究学会でも、この本のことが話題になっていた。

19世紀アメリカ南部に奴隷の少女として生まれたリンダ・ブレント(ジェイコブズの偽名)は、優しい女主人の死後、悪徳を絵に描いたような医師フリントの幼い娘の所有物になる。15歳になったころからフリント医師に関係を迫られ、性的嫌がらせを受け、自由黒人の恋人との仲も引き裂かれる。思いあまったリンダは別の白人紳士サンズ氏に身を任せ、二人の子供を授かる。そのことを知ったフリント医師からの執拗な嫌がらせ、フリント夫人の嫉妬に悩まされたリンダはついに逃亡を決意する。白人協力者や自由黒人となった祖母の家の屋根裏に潜み、フリントがあきらめて子供たちを売りに出すのを待ち、北部へ逃亡する機会をうかがう。子供たちはサンズ氏と契約した奴隷商人に売られ、7年の潜伏生活を経てリンダは北部へ逃亡するが、北部での生活も必ずしも安全なものではなかった・・・

2001年に『ハリエット・ジェイコブズ自伝』として一度翻訳されているが、そのときは長い解説のついた分厚い本で、一般の人には手が出にくい研究者向けの装丁だった。今回は冗長な部分を削除した(正確に言えば)抄訳であり、サイズも手に取りやすく、パステルカラーの表紙が美しい。何よりも、訳者がリンダ(ハリエット)といっしょに泣いたり怒ったりしているのが伝わってくるところがいい。増版を重ねているというのも理解できる。考えてみれば、当時、一般の白人読者の感情に訴えかけるために書かれた奴隷体験記が、現代の一般読者の心を動かさないという理由はない。実際、感情に訴えかける力が強すぎたからこそ、この体験記はセンセーショナル(扇情的)な作り話として一度は葬り去られたのだ。

「訳者あとがき」を読むと、訳者はこの物語を、郊外の町に生まれ、何も知らずに資本主義の流れに巻き込まれ、翻弄される現代の若い女の子たちに接続しようとしている。それは物語の引き継ぎ方として正しい形だと思う。天国でジェイコブズも喜んでいることだろう。研究者も「こんな時代のものが現代に受けるはずはない」などと達観せずに、良い作品をどんどん紹介するべきだと思う(反省)。ちなみに、訳者の堀越さんは、こんなかっこいい人らしい。男前エピソード→ http://ameblo.jp/tokusokuol/entry-11506462049.html

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