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2013年6月3日(月)

明治学院非常勤、前期第六回目。過酷な奴隷制度のもとでも、アフリカ系アメリカ人は白人のなすがままになっていたわけではない。朝から晩まで働かされた後、日没から夜明けまでは彼らの時間だった。寝る間を惜しんで歌を歌い、祈りをささげ、物語を語った。

奴隷たちにとって、キリスト教は二重の意味を持っていた。奴隷主はそれを主人に忠実であれという服従の教えとして奴隷たちに与えた。しかし、奴隷たちはやがて、聖書のなかに出エジプト記のような解放の物語が収められていることを知った。奴隷たちは主人に隠れて自分たちだけの祈祷集会を開くようになった。そのなかで歌われるようになったのがスピリチュアル(霊歌)である。

霊歌がブラック・ゴスペルの原型となったことは確かだが、のちのゴスペルと違い、霊歌は作者不詳のいわばフォーク・ソングである(霊歌をリアレンジしてゴスペルとして歌うということはある)。その内容は聖書のエピソードに題材をとったものが多いが、それだけではない。「水びしゃくについていけ」のような歌は、奴隷を逃がすためのネットワークである「地下鉄道」の暗号に使われたという説もある(「水びしゃく」は北斗七星のことで、逃亡奴隷が目指すべき北の方角を示す)。そこには天上への祈りだけではなく、地上で苦しむ奴隷たちの思いがこめられていたと言うべきだろう。

このあと、奴隷制時代のアフリカ系アメリカ人を代表する人物として、自身も奴隷制から逃亡した身でありながら、「地下鉄道」の「車掌」として300人以上の奴隷を救い出した女性ハリエット・タブマン、やはり元逃亡奴隷で奴隷制反対運動の弁士となり講演や著書で奴隷制の悲惨さを訴えたフレデリック・ダグラス、逃亡後、奴隷制反対を訴える一方で女性参政権運動にも尽力したソージャナー・トゥルースことイザベラ・バウムフリーを紹介した。なかでも、ソージャナー・トゥルースの有名な演説「わたしは女ではないのですか」は、黒人男性とも白人女性とも違う、二重に差別された黒人女性の立場を明らかにしながら、立場を超えた連帯を訴えた特筆すべき内容である。

Sojourner_truth_2

「あちらの男性が、女性が馬車に乗るときには手を貸さなければならないとおっしゃいました。溝を渡るときには抱きかかえなければならないし、どこでも最高の場所にいてもらわなければならないと。それでは、わたしは女性ではないのですか?わたしが馬車に乗るときにも、泥だらけの水たまりを渡るときにも、誰もわたしに手を貸してはくれませんでしたし、最高の場所においてなどくれませんでした。わたしを見てください!(中略)わたしは男の人と同じくらい働けますし、同じくらい食べられます―手に入ればの話ですが。同じくらい鞭に耐えることだってできます。それでは、わたしは女性ではないのですか?わたしは13人の子供を産み、ほとんどが奴隷制に売られていくのを見ました。わたしが母親として嘆き悲しんでも、イエス以外に聞いてくれるものはいませんでした。それでは、わたしは女性ではないのですか?(中略)もし神がおつくりになった最初の女性がひとりで世界をひっくり返すぐらい強かったのなら、ここにいる女性がいっしょになってその力を取り戻し、それを正しい目的のために使いましょう」

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