無料ブログはココログ

« 2012年12月16日(日) | トップページ | 2012年12月18日(火) »

2012年12月17日(月)

明治学院非常勤、後期第十三回目。前々回、前回と見てきたスパイク・リー監督の映画『マルコムX』(1992)を最後まで。マルコムが暗殺されるシーンに衝撃を受けた学生も多かったようだ。冒頭にロドニー・キング事件の映像、最後に「ぼくはマルコムX!」と叫ぶ子供たちとネルソン・マンデラを配置することで、マルコムが命を賭して遂行しようとした運動が今も受け継がれていることが暗示されている。逆に言えば、それは差別がいまだ(映画の発表された92年はもちろん、今でも)なくなっていないということでもあるのだが。

残った時間でハーレム・ルネサンス以後のアフリカ系アメリカ人の文学を、駆け足で紹介した。1929年暮れの株価大暴落で華やかなハーレム・ルネサンスの時代は終わり、失業者が施しを求めて列をなす大恐慌の時代がやってくる。白人に対する恐怖から白人女性を絞殺し、遺体をボイラーで焼くというショッキングな内容の小説『アメリカの息子』(Native Son、1940)もこうした時代を背景として生まれた。作者のリチャード・ライトは抗議小説の作家として注目を浴びるが、彼の本質はすぐれたストーリーテリングにこそあるのではないかと思う。実際、目を背けたくなるような内容にもかかわらず、『アメリカの息子』には読者をぐいぐいとひきこんで離さない力がある。

ラルフ・エリソンジェイムズ・ボールドウィンは、ライトの活躍を受けて独自の世界を確立した作家である。エリソンの『見えない人間』(Invisible Man、1952)は、黒人の主人公が人種差別社会でさまざまな経験をするうちに自分が「見えない存在」であることに気づき、地下室に閉じこもり盗電によっていくつもの電球を煌々と照らしながら反逆に向けて動き出そうとするまでを描く。生前に発表された小説はこれだけだが、象徴的な表現にもかかわらず生々しい印象を残す作品。ボールドウィンは父親との葛藤を描いた『山に登りて告げよ』(Go Tell It On the Mountain、1953)、ゲイの男性を主人公とした『ジョヴァンニの部屋』(Giovanni's Room、1956、ボールドウィン自身ゲイである)など、それまでアフリカ系の作家があまり取り上げなかったテーマの作品を発表した。『もう一つの国』(Another Country、1962)はその集大成とも言える作品。ちなみに、映画『マルコムX』で朗読されていた、マルコムの死を悼む詩を書いたのもボールドウィンである。

1970年代以降、俄然注目を浴びたのはアフリカ系女性作家だろう。アリス・ウォーカートニ・モリソンといった女性作家は、人種差別社会では黒人として、黒人社会では女性として、二重の差別を受けてきた。こうした女性たちが自分たちの表現を求めたとき、お手本としたのがハーレム・ルネサンスの回に紹介したゾラ・ニール・ハーストンであったことは指摘しておきたい。黒人社会内部の性差別を赤裸々に描いたアリス・ウォーカーの『メリディアン』(Meridian、1976)や『カラー・パープル』(Color Purple、1982)は、それまで沈黙を強いられてきた黒人女性に歓迎される一方、黒人男性からは黒人社会内部の恥部を晒すものとして非難されることもあった。アフリカ系アメリカ人としてはじめてノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンは、実験的な手法も含む文体で、アフリカ系アメリカ人の体験を語る重厚な作品が多い。白人に対するコンプレックスを正面から扱ったデビュー作『青い眼が欲しい』(The Bluest Eyes、1970)、奴隷制のもと引き離されるのが嫌で子供を殺した母親のもとに、殺した娘らしき女がゾンビのような姿になって帰ってくる『ビラヴィド』(Beloved、1988)など、どれもぜひ読んで欲しい作品である。

« 2012年12月16日(日) | トップページ | 2012年12月18日(火) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73760/56509402

この記事へのトラックバック一覧です: 2012年12月17日(月):

« 2012年12月16日(日) | トップページ | 2012年12月18日(火) »

最近のトラックバック

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31