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2012年11月6日(火)

國學院非常勤、後期第七回目。『ジャズの誕生』続き。ダホメの儀式の話―ピークに達すると、サウンドは不規則な空気ドリルを複数組み合わせたように聞こえるかもしれない。音楽はポリリズム的、すなわち二つ以上の違ったリズムが同時に演奏される。5つか6つのこともあるかもしれない。西アフリカ音楽に共通の基盤は3/4、6/8、4/4という拍子記号の組み合わせである。それはまるでオーケストラが同じ曲を、ワルツ、ワン・ステップ、フォックス・トロットとして演奏するようなものだ―それも全部同時に。そして、もちろん、歌や手拍子や足拍子がさらにリズムの複雑さを加えている。来週からは少しとばしてニューオリンズの話に入る・・・ということでYouTubeで見つけたニューオリンズのお葬式の映像を見せた。

日本女子大非常勤、第七回目。マリ、ギニアを中心に、西アフリカのマンデ文化について話した。ル・アンバサダー・インターナショノー時代のサリフ・ケイタが歌う「マンジュ」の映像を流しながら授業開始。前回も述べたようにサリフ・ケイタは王族の末裔でアルビノという特異な生い立ちのミュージシャン。黒人の両親から白い子供が生まれることが理解できなかった父親に疎まれ、一時は路上生活も経験した。また、王族の息子がミュージシャンというグリオのような存在になることは決して歓迎されることではなかったが、今ではサリフの成功物語がグリオによって語られるまでになった。

サリフ・ケイタの祖先にあたるのが、古代マリ帝国の創始者スンジャータ・ケイタ。この人の生涯はさまざまな伝説とともにグリオたちによって語り継がれている。例えば、こんなの・・・バズマナ・シッソコの「スンジャータ」。この人はマリの国歌をつくったことでも知られる有名なグリオなんだけど、ンゴニっていう弦楽器を弾きながらすごい渋い声で歌う。「マリのライオン」なんて呼ばれることもある。日本の音楽とはずいぶん違う感じがするかもしれないね。でも、日本もぼくが生まれるちょっと前までは、浪曲みたいな語り物の需要がけっこうあったんだ。ぼくはけっこう浪曲も好きでね。江戸っ子だってね、寿司食いねぇ・・・とか、知らない?知らないネ・・・

バズマナ・シッソコの語りは素晴らしいけど、言葉がわからない。スンジャータ・ケイタの伝説をかいつまんで紹介しよう。スンジャータ・ケイタのお父さんにあたるナレ・マガーン・カンテという王様がいて、大帝国になる前の小国マリを治めていた。そこに隣国から狩人が獲物を追ってやってくる。獲物を捕らえた狩人は、慣例通りその土地の王様に謁見して、獲物を半分差し出した。そして、獲物を取らせてくれたお礼に吉凶を占ってみせたんだ。狩人の占いによれば、「やがて王国に世にも醜い女性が現れる。その女と王が結ばれれば、二人の間に生まれた子供が強力な王になる」という。でも、王様には美しい王妃も王子もいたから、そんな話は信じなかった。

そのころ狩人の国では大変なことが起きていた。巨大なバッファローが現れて、人びとを次々と襲った。勇敢な狩人たちもおおかた殺されてしまった。隣国のマリから二人の狩人が救援のために派遣される。ところが、慣れない土地でどこにいるかもわからないバッファローを捜してヘトヘトになり、木の下にへたりこんでしまう。もう帰ろうかと話していると、木に止まっていた小鳥の泣き声が聞こえる。「この先に行くと、バッファローについて知っている人がいるよ、チュンチュン」 その声に励まされて、二人は歩き出す。

しばらくいくと、大きな身体をしたおばさんが水浴びをしている。バッファローについて知っているというのはあの人に違いない。二人は干し肉や水でご機嫌をとってバッファローの話を聞こうとする。おばさんは、「ああ、あの村人を何人も殺したバッファローだね・・・勇敢な狩人がもう七人も命を落とした・・・バッファロー・・・私が・・・私がその・・・

バッファローだよ!!

二人はびびって逃げようとするんだけど、つかまってしまう。そして、バッファローのおばさんは言うんだ。「まあ、待て。そろそろ私も最後の時が近づいている。なんなら、お前たちに殺されてやってもいい。ただし、条件がある。私を殺したら、狩人の国の王様が何でも褒美を取らせてやろうと言うだろう。そしたら、村の娘を貰いたいというんだ。そうしたら、村中の美しい娘たちが並ぶなかで、いちばん醜いソロガンという背中の曲がった娘を選ぶんだ。それが私の娘だからね。ソロガンはやがてこの地域を束ねる強力な王を産むことになる」

「さあ、私を殺したいなら、まずは私から逃げるんだ」(なんか、森のくまさんみたいな展開になってきた)「そして、追いつかれそうになったら、袋のなかに入っているものを後ろに投げるんだよ」 バッファローおばさんの言うとおり、二人は逃げた。追いつかれそうになったとき、袋のなかの糸巻き棒を投げるとそれはヤシの林に姿を変え、バッファローの行く手を遮った。それでもバッファローは追ってくる。次に袋のなかから石を投げると巨大な岩山が姿を現した。バッファローは岩山も越えてきた。そこで最後に卵を投げると、大きな泥沼になった。足を取られて動けなくなったバッファローを射ぬいて、二人の狩人はバッファローを退治することに成功した。

狩人の国の王様は隣国の勇敢な狩人たちを歓待し、何でも褒美を取らせようと言った。二人はバッファローとの約束通り、娘を貰いたいといって、並みいる美女たちには目もくれず、背中の曲がった醜い女に近づいていった。名前を聞くとソロガンという。二人はその娘を貰ってマリ国への帰路につく。帰途、強力な王を生むというソロガンと関係を持とうとするが、はねのけられてしまう。何しろバッファローだからね。二人の手に負える相手じゃない。

帰国後、二人はソロガンを王様に献上する。狩人の占いを思い出した王様は、ソロガンとの間に子供をつくることを決意する。王様は自らに動物に姿を変え、夜な夜な寝床で様々な動物に姿を変えるソロガンとくんずほぐれつするが、なかなか結ばれるに至らない。何しろ、バッファローだからね。最後は半ば脅すようにして関係を持ち、二人の間にスンジャータという王子が生まれる。

ところがこのスンジャータ、立ちあがることもできなければ、言葉をしゃべることもできなかった。それでも王様は、兄である第一王子を差し置いてスンジャータを跡継ぎに指名するんだけど、第一王妃サスマ・ベレテと第一王子ダンカラン・ドゥマニ・ケイタは面白くない。ついに王が死ぬと、スンジャータに国の統治を教えるはずだったグリオを幽閉して、王座を奪ってしまう。歩くこともできないスンジャータだったけど、ある日、母ソロガンが侮辱されるのを見て一念発起、鉄の杖を作らせてそれにつかまって立ちあがろうとする。ところが、強いはずの鉄の杖はいとも簡単に折れてしまう。そこにかつて彼の誕生を予言した狩人がやってきて、木の枝を杖にしろという。木の枝を杖にしてみると、スンジャータはすくっと立ちあがり、全身から力が湧いてきて、巨大なバオバブの木を引き抜き、母ソロガンのところまで担いでいった(ここで映画Keita! L'héritage du griotから当該シーンを)。

・・・と、話はまだまだ続く。王座を奪われることを恐れた兄によって別の国に追放されたスンジャータは、他国の侵略という危機に呼び戻され、帝国を建設する偉大な王へと成長していく。

このあと、マリ帝国やその版図を引き継いだソンガイ王国がサハラ交易によって成り立っていたこと、西洋との海路による貿易やモロッコの侵攻などによってサハラ貿易が衰えるにしたがって、その勢力を縮小していったことなどについて話した。さらに、最初に見せたル・アンバサダーの「マンジュ」がギニアの大統領セク・トゥーレに捧げる歌であったこと、セク・トゥーレは19世紀末に西アフリカ内陸部にイスラム帝国を建設したサモリ・トゥーレの孫であると言われていること、「隷属のもとでの豊かさよりも、自由のもとでの貧困を選ぶ」とフランスからの完全独立を求めたセク・トゥーレは独立の英雄であると同時に、独裁者としておそれられる存在でもあったことなどを説明した。セク・トゥーレは伝統音楽を追及する地元のバンドを援助したことでも知られており、サリフ・ケイタもそんなトゥーレに恩義を感じていた。また、ギニアのバンド=ベンベヤ・ジャズ・ナショナルは「過去へのまなざし」というサモリ・トゥーレのことを歌った歌で賞を取っている。最後に、ベンベヤ・ジャズ「ングナマコロ」の生き生きとした映像を流しながら、Fin。

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