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2012年10月9日(火)

國學院非常勤、後期第三回目。授業に先立って、映画『ストーミー・ウェザー』から、ファッツ・ウォーラーの映像を見せた。学生の顔から笑みがこぼれる。ジャズっていうとね、眉間に皺を寄せてサックスを吹いているようなイメージかもしれないけど、少なくとも1940年代くらいまでは、こういうサービス精神満点の楽しい音楽だったんだ。さて、テキストはファッツ・ウォーラーの有名なエピソードからはじまる ― 「ウォーラーさん、ジャズって何でございますの?」 老婦人の質問に答えて、今は亡き偉大なファッツはこう言ってため息をついたことになっている。「奥さま、今になってそんなことも分からないようでしたら・・・首を突っ込まないでくれ!」 ― ここにはジャズの定義しにくさとともに、ジャズが参加するもののための音楽であるということが示されている。外側から見て観察するだけの連中は、ジャズにとってジャマモノでしかない。

日本女子大非常勤、第三回目。奴隷制によって世界に離散したアフリカ文化。南北アメリカやカリブ海に見られるアフリカ系の音楽 ― サンバ、ルンバ、ソン、スカ、レゲエ、カリプソ、コンパ、ブルース、ジャズ、R&B、ヒップホップ ― がそのいい例である。こうしたアフリカ系の音楽はやがてアフリカに逆流する。西アフリカや中央アフリカでは、南アフリカのラテン音楽、とりわけキューバの音楽の人気が高かった。里帰りしたラテン音楽はアフリカ風の味付けをされ、新しいアフリカ音楽として生まれ変わる。そうした例のひとつとして、セネガルのオルケストラ・バオバブをかけた。

世界に離散したアフリカ系文化(アフリカン・ディアスポラの文化)は、音楽に限ったことではない。例えば、アフリカの宗教は、ヴードゥーカンドンブレサンテリアと言った形でカリブ海や南北アメリカ各地に痕跡を残している。1930年代に、アフリカン・ディアスポラの文化・文学運動としてフランス領カリブ諸島とフランス語圏アフリカで生まれたのが、ネグリチュードである。マルチニークのエメ・セゼールなどとともにネグリチュードの運動を担ったのが、のちにセネガル初代大統領となった詩人レオポルド・セダール・サンゴールだった。ここで、コラを演奏しながら、サンゴールの詩「黒い女」を朗読するラミン・コンテの録音を聞いた。

後半はセネガルの文学と映画の話。最初にマリアマ・バーの代表作『かくも長き手紙』を紹介。突然の心臓発作で夫に先立たれた女性ラマトゥライは、友人アイサトゥに手紙を書く。アイサトゥは、若い第二夫人と結婚して自分を蔑ろにした夫と別れ、新しい人生を送っている。ラマトゥライもまた、若い第二夫人にうつつをぬかす夫モドゥ・ファルに裏切られていた。しかも、第二夫人は娘ダバの親友ビヌトゥ。ダバは「最近、キモイおっさんに言い寄られて、困っちゃうの」といったビヌトゥの告白を聞いていた。自分の父親のことだとも知らずに・・・ビヌトゥは結局、財産に目がくらんだ母親によってモドゥ・ファルと結婚させられてしまう。ラマトゥライは屈辱を感じながらも、アイサトゥのように夫を捨てることもできず・・・(ラマトゥライがどうなるかは、読んでからのお楽しみ。日本語訳も出ているのでぜひ読んでね)。

続いて、センベーヌ・ウスマン。日本語に訳出されている作品も多いセネガルを代表する作家である。長編も素晴らしいが、病気で亡くなった子供の遺体をバスに乗って運ぶ男性と乗り合わせた人々の人間模様を描く「ニーワン」のような中・短編に味わい深いものがあって、ぼくは好きだ。60年代以降は、識字率の低いアフリカでより広い人びとにメッセージを伝えるため、またアフリカ口承文化の伝統をより生かすため、映画監督としても活躍した。改宗を目論むイスラム勢力と民族の伝統を守ろうとする人びとの闘いを描いた『チェド』(1977)、女性器切除の問題を正面から扱った遺作『母たちの村』(2004)などの作品で知られている。次回、『母たちの村』を見はじめる予定。

最後にセネガルを代表する映画監督をもう一人。ジブリル・ジオップ・マンベティ。斬新な映像を駆使しながら、ダカールに暮らす人びとを生き生きと描き、今後の活躍を期待されていたが、1998年53歳の若さで病死した。マンベティを高く評価していた白石顕二さんの思い出話なども織り交ぜながら、『ハイエナ』『太陽を売った少女』など代表作について語った。なかでも、宝くじに当たったものの、それを扉に貼ってしまい、はがれなくなってしまったからさあたいへん・・・という短編映画『ル・フラン』のストーリーが受けた。

一夫多妻制や女性器切除など、アフリカの女性が直面する問題を、女子ばかりのクラスで男であるぼくが扱うというのはなかなか難しいところだが、女子大だからこそ、避けて通ることのできないテーマだと思う。

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