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2012年6月18日(月)

明治学院非常勤、前期第九回目。ビリー・ホリデイ奇妙な果実」を聞きながら授業開始。

南部の木が奇妙な果実をつけている
血が葉を濡らし、血が根を濡らす
黒い身体が南部のそよ風に揺れている
ポプラの木に下がる奇妙な果実
麗しき南部の田園風景
飛び出した眼と歪んだ口元
マグノリアの香りは甘く、さわやか
そこに突然焼け焦げた肉の臭い
カラスについばまれた果実を
雨が摘み取り、風がすする
太陽が腐らせ、木が落とす
ここにあるのは 奇妙な果実と苦い収穫
(ビリー・ホリデー「奇妙な果実」1939)

奴隷制拡大に反対する共和党のエイブラハム・リンカーンが大統領になったことによって、南部と北部の対立は決定的になった。南部諸州はジェファーソン・デイヴィスを大統領にアメリカ連合国として分離独立を宣言し、南北戦争の火ぶたが切って落とされた。この戦争の争点のひとつが、奴隷制であったことは事実である。しかし、それだけではない。奴隷を使ったプランテーション型農業を基盤とした南部と、契約労働に基づく商工業を中心とした北部は国の将来像をめぐってあらゆる点で対立した。南北戦争は、南部と北部の対立を解消し、連邦をひとつに保つための戦争だった。「この戦争における私の至上の目的は、連邦を救うことにあります。奴隷制度を救うことにも、滅ほすことにもありません」というリンカーンの言葉は、そのことを端的に表している。そのためには、「奴隷の解放」すらも利用すべき取引材料だった。奴隷解放宣言が、1862年に、「連邦から脱退した州のなかで、翌年の1月1日までに連邦に戻らなかった州では奴隷を解放する」という予備宣言の形で出されたのも、そうした戦略の表れである。

ともあれ、南北戦争で北軍が勝利したことにより、奴隷たちは解放された。ところが、解放された元奴隷たちを待っていたのは、「自由」という名のパラダイスではなかった。自由であるということは、飢える自由もあるということである。奴隷制のもとでは、奴隷は財産、貴重な労働力として、最低限の衣食住が与えられた。しかし、ひとりの労働者として独立した元奴隷たちは、自分で生きる糧を見つけなければならない。奴隷ひとりにつき、「ラバ一頭と40エーカーの土地」が与えられるという噂もあったが、サディアス・スティーヴンスのような人物の努力にもかかわらず、結局は実現しなかった。元奴隷たちの多くは他に仕事もなく、元主人に土地、農機具、種などを借り、収穫の半分から3分の2を返す小作農(シェアクロッパー)として生きていくよりほか道はなかった。

一方で、連邦軍が南部に駐留し、南北戦争末期につくられた解放民局とともに、奴隷制のない土地として南部を再建する「南部再建(リコンストラクション)」を主導していく。人種差別の根拠となる憲法の条項が修正され、アフリカ系アメリカ人に公民権を与える法律(公民権法)がつぎつぎと成立する。強い反発を受けながらもハイラム・R・レベルズら黒人の国会議員も生まれた。ところがアフリカ系アメリカ人の地位向上がすすむと、必ずそれに対する反動がある。南北戦争直後に結成されたクー・クラックス・クランなどの白人至上主義団体は、黒人の排斥をめざしてリンチ殺人や放火などのテロ行為をくり返した。1870年ごろから、根強い人種差別を嫌って北部に移るアフリカ系アメリカ人が急増する。

そんななか、1877年、南部再建に終止符を打つ決定的な出来事が起こる。前年の大統領選挙。開票の結果、民主党のサミュエル・ティルデン候補が勝利するが、共和党のラザフォード・ヘイズ陣営は不正選挙があったとしてこれに反発。結局、共和党と民主党で取引が行われ、ヘイズを大統領とする代わりに、連邦軍が南部から引き上げることになった・・・と言われている。連邦軍の監視下を離れた南部は、以降、アフリカ系アメリカ人の公民権を奪い、あらゆる場において人種隔離をすすめる法律(ジム・クロウ法)を次々と制定していった。そんななか、リンチで殺されるアフリカ系アメリカ人の数は増え続け、1890年代にピークをむかえる。

Img024

昨年の日記もご覧ください。

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