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2012年6月11日(月)

明治学院非常勤、前期第八回目。ピート・シーガーの歌う「ジョン・ブラウンズ・ボディ」を聞きながら、授業開始。日本では「おたまじゃくしは蛙の子」として知られるメロディだが、元歌は「ジョン・ブラウンの死体が墓場から立ちあがり、我らとともに歩みゆく」という、奴隷制廃止のために反乱を起こしたアボリッショニスト=ジョン・ブラウンを讃える内容。アメリカにおける南北戦争の時期はちょうど日本の幕末から明治維新と重なっており、開国後入ってきたアメリカの新奇なメロディが庶民に広まり「おたまじゃくしは蛙の子」として定着したのだろう。ちなみに、「らめちゃんたらぎっちょんちょん」の「東京節」ももともとは、北軍の兵士たちによって歌われた「マーチング・スルー・ジョージア」である。日本が幕臣と薩長に分かれて戦っていたころ、アメリカも南部と北部に分かれて内戦をくりひろげていたのだ。

南部と北部の対立が奴隷制をめぐるものであることは確かだが、それだけではない。商工業を中心とした国づくりを目指していた北部はこの時点では保護貿易を望んでいたし、奴隷制のような効率の悪いシステムではなく、いつでも首が切れる契約労働への移行を望んでいた。一方、農業を基盤とし、農産物(特に綿花)を北部やイギリスに売ることで経済が成り立っていた南部は自由貿易を望み、プランテーション維持のため奴隷制の存続に執着していた。奴隷制が対立の焦点であるとしても、その背景には国の将来像における決定的な相違があった。

こうした南北の対立は、領土の拡大によって表面化する。19世紀を通じて、アメリカは次々に新領土を獲得した。1803年、ルイジアナ購入に始まり、45年のテキサス併合、さらに、46~48年の米墨戦争の結果、ニューメキシコとカリフォルニアがメキシコから割譲される。これらの新領土が州に昇格するたびに、新しい州を自由州にするのか、奴隷州にするのかということが問題になった。アメリカの上院では、各州に同数の議員が割り当てられる(下院は人口比で配分)。つまり、自由州が増えれば北部が、奴隷州が増えれば南部が議会において勢力をのばすということになる。

こうした問題を解決するために、南部と北部は数十年にわたって妥協に妥協を重ねた。1820年には北緯36°30′線以北に奴隷州を認めないという規定の例外として、ミズーリが奴隷州として連邦に加入する(ミズーリの妥協)。このときは議会の均衡を守るために、コネチカット州からメーン州を分離させ、自由州とした。1850年には、メキシコから獲得したカリフォルニアを自由州とする代わりに、それまでよりも格段に厳しい逃亡奴隷法を制定することで南北が妥協する。しかし、カンザス、ネブラスカの州昇格に際して、妥協はついに行き詰った。両準州における奴隷制の可否は住民自身の決定に委ねられる。このことによって、同地域はたちまち内戦状態になった。

John_brown_2

カンザス・ネブラスカの混乱のなか、過激なアボリッショニストとして頭角を現したのが、ジョン・ブラウンである。ブラウンは子供たちを連れてカンザスに移住、奴隷制拡大派や奴隷所有者を殺し、11人の奴隷を解放した。もちろん、ブラウンのほうも奴隷制拡大派から命を狙われていたのだが。奴隷制の廃止を神から与えられた使命と考えたブラウンは、1859年、21人を率いてヴァージニア州ハーパーズ・フェリーにある連邦軍の武器庫を襲撃するが、のちに南軍の司令官となるロバート・リー将軍によって鎮圧され、反逆罪で絞首刑になる。この事件が、非妥協的なアボリッショニスト=ウィリアム・ロイド・ギャリソンや、ハリエット・ビーチャー・ストウの小説『アンクル・トムの小屋』とともに、奴隷制をめぐる南北の対立を煽った。

やがて、奴隷制拡大(あくまでも、奴隷制そのものではなく、その拡大であることに注意)に反対する共和党が結成され、1860年、同党のエイブラハム・リンカーンが大統領に当選するに至って、南北の対立は決定的となり、南部諸州はジェファーソン・デイヴィスを大統領にアメリカ連合国として分離独立を宣言。南北戦争の火ぶたが切って落とされた。

昨年の日記もご参照ください。

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