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2011年7月4日(月)

ゴーヤがネットにからみつき始めた!

明治学院非常勤第九回目。今回はビリー・ホリデイの歌う「奇妙な果実」を聞きながら、授業をはじめた。リンチにかけられ、木に吊るされた黒人の死体を、腐っていく果実に譬えて歌う。ビリー・ホリデイの自伝に、はじめてこの歌を人前で歌ったときのことが書かれている。ビリーが歌うのは一杯ひっかけてお姉ちゃんのお尻触ることしか考えていないような(笑)男たちが集まる酒場。いつもは「あなたがいないと生きていけないの」みたいな歌を歌っている彼女が、こんなシリアスな歌を歌ったら、客はドン引きするんじゃないかって不安もあった。でも、いざ歌ってみると、聴衆は静かに歌に聞き入り、割れんばかりの拍手でビリーを称えた。それだけ、リンチの残酷さを身にしみて感じていたってことだね。この歌が作られたのは1930年代。奴隷制はとっくに終わっている。アフリカ系アメリカ人は奴隷制から解放されて自由になったはずなのに、どうしてこんなことがくり返されたんだろう・・・今日はそういう話をしたいと思う。

Lynching1908

その前に、先週の復習。先週は南北戦争がはじまるところまでだったね。アンケートを見ると、歴史的な事実について思い違いをしている人も多かったみたいだけど・・・少なくとも、次の点は押さえてください。アメリカが領土を拡大していくにつれ、新しく獲得した領土を奴隷州にするか自由州にするかということが大問題になったということ。奴隷州が増えれば南部の勢力が増し、自由州が増えれば北部が勢力を伸ばす。勢力の均衡を保つため、新しい領土が州に昇格するたび、南部と北部は妥協を重ねます。その間で翻弄されてきたのが、奴隷を含むアフリカ系アメリカ人だったと言っていい。こうした数合わせはついに限界に達し、自由州か奴隷州かの選択が住民に委ねられたカンザス・ネブラスカは流血の惨事になります。そこから頭角を現したジョン・ブラウンや、ウィリアム・ロイド・ギャリソンといった白人アボリッショニスト、フレデリック・ダグラスをはじめとするアフリカ系アメリカ人の活動家によって、反奴隷制の運動がすすめられていくなか、南北戦争は起こった。

さて、この南北戦争。一般には奴隷制をなくすための戦争と思われているけど、果たしてそれは正しいだろうか。南北戦争の原因が奴隷制にあったことは間違いない。また、南北戦争の結果として、奴隷解放宣言が出されて、奴隷制に終止符が打たれたのも事実だ。でも、南北戦争の目的は本当に奴隷制をなくすことにあったのだろうか。リンカーンは南北戦争中の手紙にこう書いている。

この戦争における私の至上の目的は、連邦を救うことにあります。奴隷制度を救うことにも、滅ぼすことにもありません。もし奴隷はひとりも自由にせずに連邦を救うことができるものならば、私はそうするでしょう。そしてもしすべての奴隷を自由にすることによって連邦が救えるのならば、私はそうするでしょう。またもし一部の奴隷を自由にし、他はそのままにしておくことによって連邦が救えるものならば、そうもするでしょう。

リンカーンの関心は国の分裂を防ぐことにあった。同じころ、日本で坂本龍馬がそうだったようにね。去年の大河ドラマとか、『JIN -仁-』とかで、薩摩だ長州だ、統幕だ幕臣だと争っている国内をまとめようと奔走している龍馬を見た人もいるでしょう。茶碗をひっくり返して、「そんなものはこん茶碗のなかの争いぜよ!外から手をかければこうしてひっくり返されてしまうぜよ!」とかね。国が分裂しているすきに、外国から攻められてしまうかもしれない。それはアメリカもいっしょ。だから、リンカーンの判断はある意味間違っていない。でも、彼が奴隷制をなくすために頑張っていたかというと、これはアヤシイ。奴隷解放宣言にしたって、まず予備宣言っていうのを出すのね。「連邦に戻らないと奴隷制廃止しちゃうぞ」っていう。だから、これも南部に対する脅しっていう側面が強い。

ともあれ、戦争は連邦側の勝利に終わり、奴隷解放宣言が出されて、奴隷は自由の身になった。リンカーンは南北戦争終結直後に暗殺されちゃうけど、連邦軍が南部に駐留して、新しく奴隷制のない南部をつくっていこうとする「南部再建期」がはじまる。解放された元奴隷たちの問題を扱う「解放民局」が設立され、元奴隷たちにさまざまな権利を認める憲法修正条項や公民権法が成立。選挙権・被選挙権を得たアフリカ系アメリカ人のなかから、初の国会議員や知事が生まれる。解放された奴隷たちは喜んだ。「いい待遇をしてやり、十分食べさせてやり、欲しがっているものは何なりと与えてやったとしても、それだけじゃだめなんで、―檻を開けてやってはじめて―そいつは、幸せなんですね」(ジュリアス・レスター『奴隷とは』175-6)っていう元奴隷の言葉がそれをよく表している。でも、解放後の世界が天国だったかというと、残念ながらそうじゃなかった。

自由になるということは、飢える自由もあるということだ。奴隷制のもとでは、朝から晩までこき使われるけど、十分じゃないにせよ衣食住は保障される。でも、自由の身になったらそうはいかない。自分で仕事を探して食べていかなければならない。共和党は奴隷制拡大反対の党であると同時に、自由経済を支持する北部資本家の党でもあった。奴隷制なんて効率の悪い制度はやめて、好きなときに雇って好きなときに首を切れる自由契約でいこうよ、っていうわけ。元奴隷たちはそういう弱肉強食の世界にいきなり放り込まれた。最初は解放民ひとりあたり40エーカーの土地とラバを与えるって噂もあったし、その実現のために奔走したサディアス・スティーヴンスのような人もいたんだけど、結局空手形に終わった。そんななかで発展したのが、シェアークロッピングっていう、一種の小作人制度だ。

「これでお前も自由の身だな」
「ええ、だんな、奴隷の身分はもうこりごりです」
「けど、これからどうする?働こうったって、仕事もないだろ」
「ええ、だんな、そこなんで・・・」
「どうだ、お前さえよければ、おれの土地を貸してやってもいいぞ」
「ほんとですか、だんな!」
「そのかわり、収穫の3分の2は俺によこすんだぞ」
「ええっ、そ、それはあんまりきびし・・・」
「俺の土地だからな、あたりまえだろう」
「そりゃあ、そうですが・・・」
「そうだ、おまえ、種も鋤鍬もないだろう。貸してやろう」
「あ、ありがとうございます、だんな」
「そのかわり、秋には作物で返してもらうぞ」
「そんな・・・」

こうして、多くの解放民は奴隷時代と同じように元主人の土地に縛りつけられたままだった。わずかに得た現金収入も元主人が経営する商店(多くの場合、法外な代金を要求した)での買い物に消えていった。

それに加えて、再建期の南部は没落した南部白人の鬱屈した感情が渦巻いていた。こうしたなかから、クー・クラックス・クラン(KKK)のような白人至上主義団体が登場する。KKKについては、アンケートで「今でもあるんですか?」って質問があったので、詳しく説明しよう。1866年に結成されたKKKは最初、退役した南軍兵士が暇つぶしのために新入りをいじめて遊ぶ気晴らしに過ぎなかったとも言われているが、やがて「生意気な」黒人やユダヤ人を脅すことを主眼とするようになった。さらに、選挙で北部出身者やアフリカ系アメリカ人の排除に利用されるようになるに従って、人種差別的な政治団体の様式を整えていく。この時期のKKKを美化して描いたのが、D・W・グリフィス監督による映画史に残る名作『國民の創生』(1915)である。

初期のKKKは暴力事件の頻発にたまりかねた連邦政府によって解散に追い込まれるが、1915年、『國民の創生』に影響を受けたウィリアム・ジョセフ・シモンズがKKKを再建する。この第2期KKKは、20年代半ばには会員数400万人を数えるまでになったが、20年代後半には指導者のひとりデヴィッド・カーチス・スティーヴンソンによる拉致・強姦・殺人事件などによって会員数を4万人まで減らしている。当時はハーレム・ルネサンス前夜、アフリカ系アメリカ人が自らの存在を主張しはじめた時期だった(同時にレオ・フランク事件によって、反ユダヤ人感情が広まった時期でもあった)。南部再建期にしても、1920年代にしても、アフリカ系アメリカ人が権利を求めて動きだすと、KKKが復活する。公民権運動が盛んだった50~60年代にも、運動家の殺害や黒人教会の爆破などKKKによるテロ事件が頻発している。KKKを名乗る組織は現在も複数存在しており、例えば「クー・クラックス・クランの騎士」を率いるデヴィッド・デュークは、女性やカトリックを受け入れることでソフトなイメージを打ち出しながら、人種差別的な主張を繰り返している。

さて、話を戻すと、こんな南部から逃げ出そうとするアフリカ系アメリカ人もいた・・・まずは南部の都市、それから北部へ・・・あっ!(時計を見る)時間だ!

今日はここでタイムアウト。

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