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2011年7月11日(月)

明治学院非常勤第十回目。今回は南北戦争を背景にKKKを肯定的に描いたG・W・グリフィス監督の映画『國民の創生』(1915)を見て、南部白人にとって再建期とはどういう時代だったのか、彼らがどれほど鬱屈した感情を抱いていたかということを考えてみたい。その前に、先週の復習と続き。

奴隷解放宣言が出て、黒人奴隷は解放された。でも、元奴隷たちにとって、解放後の世界っていうのはバラ色のパラダイスじゃなかった。奴隷制のもとでは衣食住に困ることはない。主人にとって奴隷は財産だから、死んだり病気になったりしたら困るからだ。解放後はそうはいかない。自分で仕事を見つけて生きていかなければならない。自由であるってことは、飢える自由もあるってことだったんだ。

ある意味では、それが共和党を支持する北部資本家の思惑だったとも言える。奴隷制なんて効率の悪いことはやめて、いつでも好きなときに雇ったり首を斬ったりできるようにしましょうよ、というわけ。やがて、奴隷たちは元主人から土地や種や農機具を借りて、収穫の半分から3分の2を返すシェアクロッピングっていう制度に縛られることになる。そんななか、戦争に負けて鬱屈した南部白人のなかから、KKKのような白人至上主義団体が生まれる。

もちろん、悪いことばかりじゃなかった。リンカーンは暗殺されちゃったけど、解放民局が設置されて、公民権法や憲法の修正といった黒人の権利を認める法律が次々と成立した。アフリカ系の国会議員や知事も生まれた。いわいる「南部再建期」ってやつだ。ところが、奴隷制のない南部をつくろうとした「再建期」は、あっけなく終わってしまう。1877年、南部に駐留していた連邦軍が引きあげたからだ。南北戦争の勝者である連邦軍が駐留している限り、南部はそうそう勝手なことはできなかった。それがあっさり手を引いてしまった。なぜだろう。

ここにも汚い大人の事情がある。この前の年、大統領選挙があって、共和党はラザフォード・ヘイズ民主党サミュエル・ティルデンって候補を立てて闘った。結果はティルデンの勝利だったんだけど、共和党側は選挙に不正があったと主張して譲らず、もめにもめた。そこで、ごにょごにょ・・・なにやら裏取引があって、「共和党のヘイズを大統領にする代わりに、連邦軍は南部から撤退する」ということになった・・・といわれている。

こうして連邦軍による監視がなくなった南部は好き勝手なことをやりだした。まず、ジム・クロウ法って呼ばれる人種隔離法が南部各地で次々に制定される。これは公共施設における人種隔離や人種間結婚の禁止など、生活のありとあらゆる面で黒人を隔離し、公民権法や憲法修正条項で認められた彼らの権利を奪うものだった。とりわけ、投票税や資格テスト、父祖条項などあらゆる手段を使って黒人から選挙権・被選挙権が奪われたことは大きかった。プリントにのせた写真。これはもっと後のものだけど、人種隔離の現実を写しだしている。水飲み場の下に書いてあるのは「Colored」。アメリカで「カラード」っていうと、黒人のことだね。以前のアメリカ南部では水飲み場すら人種ごとに分けられていたんだ。

Segregation

1896年には、プレッシー対ファガーソン判決っていうのが出た。8分の1黒人の血を引くホーマー・プレッシーっていう人が、わざと白人専用車に乗って逮捕される。そうやって、人種隔離の是非を裁判に持ちこもうとしたわけ。ところが、この裁判で最高裁は「分離すれども平等(separate but equal)」なら憲法に違反しないっていう判決を出してしまう。実際はね、「平等」なんてことはありえないよ。町の中心の使いやすいところによく整備された白人用の水飲み場があり、町はずれに壊れかけた黒人用がある。これが現実だ。でも、それを誰が証明する?この判決はこのあと、ずっと足かせとなって残ることになる。

Plessy

1890年代にはリンチで殺される黒人の数がピークに達する。南部の白人は鬱屈した気持ちを「生意気な」黒人たちにぶつけた。それは彼らにとって、憂さ晴らしのエンターテイメントだったんだ。リンチで焼かれた黒人の死体が写真に撮られ、絵葉書にすらなっているという事実が、そのことを物語っている。なかには「昨日のバーベキューの様子です」と書き添えて、母親にリンチの絵葉書を送った若者もいたという。

さて、今日はこうした南北戦争後の状況を、南部の白人たちがどうとらえていたのかを考えるために、グリフィスの『國民の創生』という映画を見たいと思う(時間の関係で後半だけ)。この映画は映画史に残る傑作であると同時に、KKKが再建されるきっかけともなった、たいへん人種差別的な内容を含む問題作でもある。

この映画の「すごさ」の部分を説明するために、映画に詳しい人にはちゃんちゃらおかしいかもしれないけど、初期の映画の歴史についてちょっと話しておきます。映画をこういうふうに一つのところにみんなで集まって見るってことを初めてやったのはフランスのリュミエール兄弟っていう人たち。まあ、発明王エジソンも映画のしくみを発明していたんだけど、みんなで見るような形では考えてなかった。1895年、そのリュミエール兄弟がパリで流したフィルムは、日常の風景をそのまま映したものだった。有名なのは、駅に入ってくる列車の映像とかね。みんな「うわーひかれるぅ!」とかいって楽しんでた(笑)。

でも、そのうち、「あ!これは物語を伝えるのに使える!」って思う人が出てくるね。いわいる劇映画。でも、最初のうちはどうしたらいいのかわからなくて、舞台でやっている演劇をそのまま映すだけ。カメラも一ヶ所に固定したまま。それがある日、「あ、カメラ動かせばいいんじゃん」って気づく。アップにしたり、アングルを変えたり。あと、クロスカッティングっていって、複数の場面を素早く交互に描くことで緊迫感を出したり。つまり、ぼくが急に発狂して学生を襲ったとする。すごい形相でつかみかかるぼくの顔、「何をするんですか」という学生の顔、ますますいきり立つぼくの顔、ぎゃ~と怯える学生の顔・・・ってこういう風に撮ったらドキドキするでしょ。まあ、こんな手法を使って、例えば『大列車強盗』なんて傑作がつくられる。これなんかは、最後に強盗が客席のほうを向いて、バーンとピストルを撃ったりして、すごく面白い。

こうやって発展してきた映画の手法を駆使してつくられた、2時間40分にも及ぶ長編スペクタクルが、これから見る『國民の創生』なんです。監督のグリフィスはこの映画と翌年の『イントレランス』で、サイレント映画の可能性を限界まで高めたと言われています。それと同時にこの映画が、KKKを美化し黒人や混血を醜く描いた人種差別的な内容であることも忘れることはできません。ちなみに、アメリカ映画史のターニングポイントとなった作品には、必ずと言っていいほど黒人が絡んでいる。最初のトーキー『ジャズ・シンガー』(1929)は黒塗りの芸人アル・ジョルソンが主役だったし、初のカラー長編『風と共に去りぬ』(1939)は南北戦争がテーマだった。また、『質屋』(1964)という映画で、それまでの厳しい基準(ヘイズ・コード)を破って女性のヌードが登場したとき、裸になったのは黒人女性だった。

登場人物と前半のストーリーをちょっとだけ説明しておきます。物語はふたつの白人家族を中心にすすんでいきます。ひとつは北部ペンシルヴェニアのストーンマン家。もうひとつは南部サウスカロライナのキャメロン家。ストーンマン家の息子たちフィルとタッドが、学生時代の友人キャメロン家の長男ベンを訪ねる。そこで、フィルはベンの妹マーガレットと恋に落ちます。一方、ベンはフィルのペンダントのなかの写真を見て、会ったこともないフィルの妹エルジーに恋をします。おお、これぞ、わたしの探し求めていた人・・・とか言ってね。きもいね(笑)。

その後、南北戦争が起こり、タッドとベンの二人の弟が戦死します。ベンは負傷して捕虜となり、そこで偶然にも看護をしていたエルジーに出会います。一度もお会いしたことはないですが、ずっとお慕いしていました・・・ますます、きもい(笑)。で、ストーンマン家のお父さん、オースティンが北部からやってきて、町を支配するという野望を抱く混血のサイラス・リンチと手を結び、南部の政治に介入する(←南部の白人から見た見方ね)。リンチは密かに、エルジーを自分のものにしようと企んでいる。もうひとり、キャメロン家の元奴隷ガスはキャメロン家のもう一人の娘フローラに思いを寄せいている。このフローラっていうのは「こんなやつおらんやろ」ってくらい天真爛漫に描かれている。うふふふふふっ~(両手を広げてくるくる回る)って、アルプスの少女ハイジみたい。これから見るところで、フローラはガスに言い寄られて逃げる途中、崖から落ちて死んでしまいます。

さて、それでは見てみましょう。

今日はフローラが崖から落ちたところまで。続きは来週。

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